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 商標「SOUTH PARK」は、アメリカ合衆国のケーブルテレビ番組の題名として需要者の間に広く認識されていた引用標章「SOUTH PARK」が我国で登録されていないことを奇貨として、先取り的に出願し、申立人の国内参入を阻止する不正の目的をもって使用するものであるから、商標法4条1項19号の規定に違反して登録されたものと判断された事例
(平成11年異議第90956号、平成12年6月7日決定、審決公報第14号)
 
1.本件商標
 本件登録第4254639号は、「SOUTH PARK」の文字を横書きしてなり、平成10年3月10日に登録出願され、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成11年3月26日に設定登録されたものである。

2.当審の判断
 平成12年1月18日付けで要旨次のような取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もない。
 「登録異議申立人(以下『申立人』という。)の提出に係る甲各号証によれば、『SOUTH PARK』の文字よりなる商標(以下『引用標章』という。)は、アメリカ合衆国のケーブルテレビ向けコメディ専門のチャンネルを提供している申立人が1997年8月に放送を開始したアニメーションテレビ番組シリーズの題名であり、同番組は、その後アメリカ国内で人気を博して、高視聴率を記録し、1998年2月には、視聴者が全米で520万人という、ケーブルテレビ番組として驚異的な数字を記録したものであり、現在、日本を含め世界の多数の国で放映されていることが認められる。
 また、申立人が商品化権を有すると認められるアニメーション・キャラクター及び『SOUTH PARK』の文字を付したTシャツ、スウェットシャツ、靴下、パンツ、帽子、ネクタイ等の関連キャラクターグッズが企業とのライセンス契約により販売されていて、売り上げを伸ばしていることが推認できる。
 しかして、本件商標は、『SOUTH PARK』の文字よりなるものであり、引用標章とその綴り字を全く同じくするものであるところ、遅くとも本件商標の登録出願時には、引用標章はアメリカ合衆国において需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
 そうとすると、商標権者は外国で周知な引用標章が我国で登録されていないことを奇貨として、本件商標を先取り的に出願し、申立人の国内参入を阻止する不正の目的をもって、本件商標を使用するものといわなければならない。
 したがって、本件商標は、商標法4条1項19号の規定に違反して登録されたものである。」
 そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件商標登録は、この取消理由によって、取り消すべきものである。
 よって、結論のとおり決定する。


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鈴木正次特許事務所