最近の注目審決・判決を紹介します。

 商標「ICHANELI」は、一連に書してなるとしても、特定の意味を把握できず、文字の最初と最後に単純な形状の「I」が配置され、商品間に高い関連性があるから、著名引用商標「CHANEL」との間に商品の出所混同のおそれがあると判断された事例
(平成11年審判第5934号、平成12年5月9日審決、審決公報第16号)
 
1.本件商標
 本願商標は「ICHANELI」の欧文字を横書きしてなり、第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品として、平成9年2月12日に登録出願されたものである。

2.原査定の理由
 本願商標は、その構成中に「スイス国8750グラールスブルクシュトラーセ28番」在「シャネル エス アー」が商品「香水等の化粧品、バッグ、婦人服、時計、アクセサリー」等に使用して著名な商標と認められる「CHANEL」の文字を有するから、これをその指定商品に使用するときは、該商品が恰も前記会社又は前記会社と何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
 したがって、本願商標は、商標法4条1項15号に該当する。


3.請求人の主張
 本願商標は、出願人(請求人)の名称「イカネリコーポレーション(ICHANELI CORPORATION)」の「(ICHANELI)」の部分を欧文字で表示したものであり、しかも、構成各文字が同書同大で等間隔に一連にまとまりよく表示されているため、「CHANEL」の文字のみを分離して看取されるようなことはなく、出所の混同は生じない。

4.当審の判断
 「CHANEL」の文字からなる標章(以下「引用商標」という。)は、「シャネル」と称呼され、フランスの服飾デザイナー、Gabrielle(愛称CoCo)Chanel及び同人の後継者並びに関連会社が商品「香水等の化粧品、バッグ、婦人服、時計、アクセサリー」等について使用する商標として、本願商標の出願時はもとより、現在においても取引者、需要者間に極めて広く認識されているものである。
 また、引用商標が使用されている上記商品は、ファッション(装身に関する流行)に関係するものであり、他方、本願商標の指定商品も、被服、バンド、ベルト、履物を始めとしてファッションに関係するものであるから、両者の間には高い関連性があるといえる。
 しかして、本願商標は、同書同大の文字を等間隔で一連に書してなるものであるが、全体として既成の観念を有する語として広く親しまれたものとは認められない。仮に、本願商標から「イカネリ」の称呼が生ずるとしても、「イカネリ」が既成の意味を持つものとも認められない。
 そうすると、本願商標がその指定商品に使用された場合には、これに接する取引者、需要者は、本願商標全体としては特定の意味を把握できないこと、本願商標を構成する文字の最初と最後に単純な形状の「I」が同じように配置されていること、引用商標が著名であること、及び本願商標が使用される商品と引用商標が使用されている商品との間に高い関連性があることから、本願商標中の引用商標と同一の綴り字である「CHANEL」の文字部分に強く注意が惹かれ、引用商標ないしは上記デザイナーを連想、想起することが少なくなく、その結果、上記デザイナー及び同人の後継者並びに関連会社の業務に係る商品との間に出所の混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
 請求人は、本願商標は請求人の名称の一部を表したものであって、構成中の「CHANEL」の文字部分のみが分離して看取されることはない旨主張しているが、上記のように、本願商標が請求人の名称の一部を表すものとして一般に広く知られているものとは認められないから、上記認定、判断に照らし、請求人の主張は失当であり、採用することができない。
 したがって、本願商標が商標法4条1項15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、取り消すべき限りでない。
 よって、結論のとおり審決する。


〔戻る〕
鈴木正次特許事務所