最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「李氏朝鮮」は、朝鮮の旧国名であって、朝鮮の最後の王朝を表したものと認められるから、一私人が私的独占使用の目的として採択・使用することは、大韓民国及び北朝鮮人民共和国の尊厳、ひいては国際間の信義則に反すると判断された事例
(平成10年審判第8954号、平成13年8月29日審決、審決公報第24号)
 
1.本件商標
 本願商標は、「李氏朝鮮」の文字を横書きしてなり、国際分類第33類「韓国産のしょうちゅう」を指定商品として、平成8年3月18日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定において、『本願商標は、ありふれた氏と認められる「李氏」の文字と、朝鮮半島の地域を認識させる「朝鮮」の文字を書してなるものであるから、これを本願指定商品に使用しても需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法3条1項6号に該当する。』旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

3.当審における拒絶の理由
 『本願商標は、「李氏朝鮮」の文字を書してなるところ、該文字は「朝鮮の旧国名」であって、「朝鮮の最後の王朝」(1392年から1910年)を表したものと認められる。してみると、指定商品である「韓国産しょうちゅう」に使用するものであっても、本願商標を日本国籍の一私人である請求人が私的独占使用の目的として採択・使用することは、大韓民国及び北朝鮮人民共和国の尊厳、ひいては国際間の信義則を保つ観点から、穏当ではない。したがって、本願商標は、商標法4条1項7号に該当する。』旨の新たな拒絶理由を発したものである。

4.当審の判断
 当審において、前記3の通りの平成13年4月11日付の拒絶理由通知に対して、請求人より何等の応答書類の提出もないものであり、上記拒絶理由は妥当なものと認めるので、本願はこの拒絶理由によって拒絶されるべきものである。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 商標「牛乳屋さんの珈琲」は、「牛乳販売店で売られている珈琲」の如き意味合いを看取させることがあるとしても、商品の品質を具体的に表したものとはいい得ないから、補正後の指定商品「コーヒー入りの牛乳,コーヒー入りの豆乳」について品質誤認のおそれはないと判断された事例
(平成11年審判第16572号、平成13年10月9日審決、審決公報第24号)
 
1.本件商標
 本願商標は、「牛乳屋さんの珈琲」の文字を横書きしてなり、国際分類第29類の種々の商品を指定商品として、平成10年5月13日に登録出願されたものであるが、その後、指定商品については、平成11年7月16日付の手続補正書において、「珈琲入りの牛乳,珈琲入りの豆乳」に減縮補正されているものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、『牛乳屋さんの珈琲』の文字を書してなるものであるが、昨今消費者の便宜をはかるため、牛乳屋で牛乳以外の飲料も販売している事実が認められることから、牛乳屋さんで販売している珈琲の如く認識され、これをその指定商品に使用するときは恰も『牛乳屋さんで販売されている珈琲』であるかの如く、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法4条1項16号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、「牛乳屋さんの珈琲」の文字よりなり、「牛乳販売店で売られている珈琲」の如き意味合いを看取させる場合があっても、商品の品質を具体的に表したものとはいい得ないものである。
 そうとすれば、本願商標を補正後の指定商品に使用しても、何等商品の品質の誤認を生じさせるものとは認められない。
 したがって、本願商標を商標法4条1項16号に該当するとした原査定は、妥当でなく取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶すべき理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所