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 商標「オリンピアード/OLYMPIAD」は、オリンピック競技大会、つまり国際間の公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって、かつ、著名なものと同一又は類似の商標と判断された事例
(平成11年審判第13074号、平成13年11月5日審決、審決公報第26号)
 
1.本件商標
 本願商標は、「オリンピアード」の片仮名文字と「OLYMPIAD」の欧文字とを二段に書してなり、国際分類第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,企業の信用に関する調査」を指定役務として、平成10年1月26日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 これに対し、原査定は、「本願商標は、『オリンピック』の標章と類似する『オリンピアード』と『OLYMPIAD』の文字を二段併記してなるところ、『オリンピアード』はオリンピックの活動において重要な役割を占めていることからして、『国際オリンピック委員会』の権威を害するおそれがあり、又は標章の象徴としての意義を減少するおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法4条1項6号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、前記した通り、「オリンピアード」の片仮名文字と「OLYMPIAD」の欧文字よりなるところ、「オリンピアード(Olympiad)」の語は、「オリンピア紀(古代ギリシャでオリンピア競技祭から次の競技祭までの4年間)」(リーダーズ英和辞典 第16刷 株式会社研究社発行)を意味する語であって、オリンピック憲章第1章において「オリンピアードの期間は、連続する4年間を意味する。各オリンピアードはそれぞれのオリンピアード競技大会の開幕で始まり、その次のオリンピアードの開幕で終了する。」と規定されているものである。
 そして、「オリンピックの五輪模様」「オリンピック」(OLYMPIC)等の標章は、前記オリンピック憲章によって、オリンピック競技大会又はこれと直接関係ある活動に限定して使用されなければならないこととされており、国際オリンピック委員会(IOC)は、各国のオリンピック委員会(日本の場合は日本オリンピック委員会(JOC))に対し、その乱用を防ぎ、常に保護し、管理する義務を負わせているものである。
 そうすると、本件商標は、オリンピック競技大会、つまり国際間の公益に関する事業であって、営利を目的としないものを表示し、かつ、著名な標章と同一又は類似の商標といわざるを得ない。
 してみれば、本願商標を商標法4条1項6号に該当するとして拒絶した原査定は妥当なものであって、これを取り消すことはできない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所