最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「」は、新見市の市章に類似した構成よりなるから、商標法4条1項6号に該当すると判断された事例
(平成10年審判第14078号、平成13年11月21日審決、審決公報第30号)
 
1.本件商標
 本願商標は、上に表示した通りの構成よりなり、国際分類第9類「埋蔵式トランク,空中式トランク」等々を指定商品として、平成7年10月31日に商標登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶理由
 原査定は、「本願商標は、著名な岡山県新見市の標章に類似した構成よりなるものと認められる。したがって、本願商標は、商標法4条1項6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標「」と岡山県新見市の市章「」は、共に、3個のやや湾曲させ、内側の一角が突出した黒塗り矩形を繋ぎ合わせ、外に膨らみをもたせた逆三角形を表し、繋ぎ目の間隙と中心部の円とにより回転翼のごとくの白抜き部分を描き出した図形をもって構成されるものであるから、両者はこの点において構成の軌を一つにするものといえる。
 そして、その細部においては、3つの矩形の組み合わせ方法並びに矩形自体の長さ、幅及び突出部分の幅に相違があるとしても、これらの図形に接する者は、このような細部における相違点についてまで記憶し印象に留めるものとは言い難く、前記の基本的構成についてのみ把握し印象に残すものとみるのが相当である。
 そうとすると、両者を時と所を異にして離隔的に観察するときは、互いに相紛らわしいものであるから、外観上該感情類似する商標といわなければならない。
 また、新見市の市章は、同市を表彰するものとして使用されているものであることからすれば、その地域及びその周辺地域において広く知られた著名な標章と判断し得るものである。
 したがって、本願商標を商標法4条1項6号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すべき限りでない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「生命エネルギー大学」は、学校教育法により設置の認可を受けている教育施設であるかの如く、世人を誤信させ、著しく社会的妥当性を欠く結果となり、公序良俗を害するおそれがあると判断された事例
(平成10年審判第19807号、平成14年2月19日審決、審決公報第30号)
 
1.本件商標
 本願商標は、「生命エネルギー大学」の文字を横書きしてなり、国際分類第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は知識の教授」を指定役務として、平成9年2月5日に商標登録出願されたものである。

2.原査定の理由
 原査定において、「本願商標は、その構成中に学校教育法によって規定されている『大学』の文字を有してなるものであるから、学校教育法2条の規定により学校の設置者以外の一私人たる出願人が、これを本願の指定役務について商標として採択使用することは穏当でない。
 したがって、本願商標は、商標法4条1項7号に該当する。」と認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3.当審の判断
 本願商標は、「生命エネルギー大学」の文字よりなるところ、学校教育法83条の2第1項(名称使用の禁止)によれば、専修学校、各種学校その他小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園(第1条)以外の教育施設は、上記に掲げる学校の名称を用いてはならない旨の規定をしている。
 しかるに、本願商標はその構成前記の通り、「生命エネルギー」の文字よりなるものであって、「大学」の文字を有すること明らかである。
 しかして、「大学」の名称は、学校教育法により当該教育施設以外においては使用し得ないものであることは前記のとおりであるから、正規の手続によって「大学」の設置の認可を受けているものとは認め難い請求人(出願人)が「大学」の文字を含む本願商標を使用する場合においては、あたかも学校教育法により設置の認可を受けている教育施設(知識の教授)であるかの如く、世人を誤信させ、その信頼を裏切るばかりでなく、著しく社会的妥当性を欠く結果となり、ひいては公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標と判断するのが相当である。
 なお、請求人(出願人)は、「大学」の文字を有する登録例を挙げ、「本願商標も登録されるべきである。」旨主張するが、仮に、その中に他の登録例との関係において矛盾するもの等が存在するとしても、具体的事案の判断においては、過去の登録例などの判断に拘束されることなく検討されるべきものであるから、前記請求人(出願人)の主張は採用の限りでない。
 したがって、本願商標を商標法4条1項7号に該当する、として拒絶した原査定は妥当であって、取り消す理由はない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所