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 商標「磯」は、引用商標「」中「磯」の文字が商品の品質、用途を表示したものであって、自他商品の識別機能を果たし得ないから、「リアルサスペンド」又は「リアルサスペンドイソ」の称呼が生ずる引用商標とは称呼上も非類似と判断された事例
(不服2000-19339、平成14年6月21日、審決公報第32号)
 
1.本件商標
 本願商標は、「磯」の文字を書してなり、国際分類第28類「遊戯用具,手品用具,運動用具,釣り具」を指定商品として、平成12年3月22日に商標登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第4396245号商標は、別掲のとおりの構成よりなり、平成11年11月29日登録出願、国際分類第28類「釣り具」を指定商品として、平成12年6月30日に設定登録されたものである(以下、「引用商標」という。)。

3.当審の判断
 本願商標は、「磯」の文字を書してなるものであるから、指定商品「遊戯用具,手品用具,運動用具」については、「イソ」の称呼及び「磯」の観念が生ずるといえるものである。
 ただし、本願の指定商品中「釣り具」との関係においては、この種の商品を取り扱う業界において、「磯」の文字は「磯釣り用の商品」であることを表す語として取引上普通に使用されている実情が認められる。すなわち、例えば、「海・川 釣りエサ百科」(株式会社つり人社、昭和56年12月15日初版発行)」に掲載の「釣り用語辞典」において、「海岸の岩礁帯。ここでの釣りを磯釣りという。」と記載されていることより、「磯」は「磯釣り」を容易に理解させるということができ、また、釣り具を扱う会社の釣用品総合カタログをみるに、「磯」、「船」、「渓流」等の用途別に項目を別けて製品紹介をする記載(「'98ダイワ釣用品総合カタログ」(ダイワ精工株式会社発行)、「2000 GAMAKATSU Fishing Gear Collection」(がまかつ発行)、「2002 Fishing Tackle Catalogue」(株式会社シマノ発行))や個々の商品についても、例えば、釣り竿の項目に「磯竿」として「磯EX遠投」(「2002 Fishing Tackle Catalogue」(株式会社シマノ発行)51頁)、ライン(釣り糸)の項目に「磯ラインマネジメント」のタイトルのもとに「IPITCH磯」(同207頁)などの記載が認められる。
 さらに、インターネットにおける「釣り用品オンラインカタログ」のサイトにおいて、例えば、「竿」の欄に「エクスプローラー磯SP」の商品名と共にその用途として「磯・堤防」の記載、「テクスター磯ロット」の商品名と共にその用途として「磯・堤防」及び説明として「…ロングサイズの磯ロット」の記載、「テクスターインサイドフォース磯」の商品名と共にその用途として「磯・堤防」及び説明として「…初級者向け磯上物中通し竿」の記載が認められるところである(http://www.xenet.ne.jp/fish/dougmk/cat10.htm)。
 そうとすると、本願商標をその指定商品中「釣り具」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、前記実情よりして、「磯釣り用の商品」であること、すなわち、該商品の品質、用途を表示したものと理解するに止まり、それをもって自他商品の識別標識としての機能は果たし得ないというのが相当であるから、「イソ」の称呼及び「磯」の観念をもって取引に資せられるとは言い難い。
 一方、引用商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、その構成中の「磯」は、「リアルサスペンド」の文字に比べてかなり大きく表されており、看者の目を引くとはいえ、前述のとおり「磯」の文字は、「釣り具」を取り扱う業界において商品の用途を表す語として使用されていることからすれば、それのみをもってしては自他商品の識別機能を果たすのは「リアルサスペンド」の文字部分であると判断するのが相当である。
 そうとすると、引用商標は「リアルサスペンド」又は「リアルサスペンドイソ」の称呼が生ずるとするのが相当であり、「イソ」の称呼をもって取引に資せられるとはいえない。また、「リアルサスペンド」は特定の意味を有しない造語と認められるから、特定の観念が生じないものである。
 してみれば、引用商標より「イソ」の称呼が生ずるとして、それを前提に本願商標と引用商標の類似を述べる拒絶査定の理由は妥当ではなく、その理由をもって両商標を類似のものとすることはできない。
 また、本願商標と引用商標は、外観及び観念においても相紛れるおそれはないものである。
 したがって、本願商標は商標法4条1項11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消を免れない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所