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 商標「」は、「AUSTIN」が現在では車種名としても使用されていない実情がある等のため、自己の商標として採択、使用することが、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものでもなく、特定の国若しくはその国民を侮辱するもの、又は一般に国際信義に反するもの等でもない、と判断された事例
(平成11年審判第2424号、平成14年11月8日審決、審決公報第37号)
 
1.本願商標
 本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第41類「小型白動車競争の企画・運営又は開催」を指定役務として、平成7年8月25日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は「本願商標は、イギリス国を表す図形とイギリスの有名な自動車メーカーを表す『AUSTIN』を含む『TEAM AUSTIN』の文字を書してなるものであるが、指定役務との関係においてはチームに自動車メーカーの名を付して『TEAM○○・チーム○○」のように表示し、レースへの参加・企画が行われている実情があるところ、構成中にこのような有名な自動車メーカーの名称を含むものを、上記自動車メーカーと何等かの関係があるものとも認められない出願人が自己の商標として独占使用することは穏当でない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、別掲の構成よりなるところ、原審説示の自動車メーカーは、ハーバート・オースチンが1906年に創業し、1922年に「セブン」を発売して広く知られるようになったが、1950年頃から合併が繰り返され、BLMC社製の車名に使用されていたものの、現在では、車種名としても「AUSTIN」の名は使用されていないのが実情である。
 また、構成中の「AUSTIN」の文字は、株式会社岩波書店発行の広辞苑第五版の「オースティン【Austin】」の項を徴するに、「アメリカ合衆国南部、テキサス州の州都。イギリスの女流作家。イギリスの法学者。」とのみ紹介されていることよりすれば、請求人(出願人)が、本願商標を自己の商標として採択、使用することが、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものでなく、あるいは、特定の国若しくはその国民を侮辱するもの、又は一般に国際信義に反するものでもなく、さらに、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められない。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取り消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '04/09/12