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 商標「」は、引用A商標「勝」引用商標「粋/いき」とは呼称において一致するとしても、外観及び観念において著しく相違するものであるから、外観、呼称及び観念を総合的に判断すると、全体としては類似の商標とみることはできない、と判断された事例
(不服2001-12378、平成15年1月28日審決、審決公報第39号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上掲のとおりの構成よりなり、第29類「ちくわ,かに風味かまぼこ,ごぼう天・ひら天・ごぼう巻・いか巻・さつま揚げ・その他の魚のすり身を主原料とした揚げ物」を指定商品として、平成12年5月25日に登録出願されたものである。

2.引用商標
 原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第2119381号商標(以下、「引用A商標」という。)は、「勝」の漢字を書してなり、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加丁食料品(他の類に属するものを除く。)」を指定商品として、昭和61年10月9日に登録出願、平成1年3月27日に設定登録、その後、平成10年11月10日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。同じく、登録第2471573号商標(以下「引用B商標」という。)は、「いき」の平仮名文字と「粋」の漢字を2行に縦書きしてなり、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(但し、奈良漬け及びその類似商品を除く。)」を指定商品として。平成1年7月24日に登録出願、同4年10月30日に設定登録、その後、平成14年5月21日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上記の通り、白丸を内側に有する白線の円と白抜きの「ニッスイ」の片仮名文字を有する横長の旗状の黒塗り図形と、太い筆のタッチで書した「活」の文字並びに、この「活」の文字の右側下部に重ねるように縦書きした「いき」の平仮名文字よりなるものであるところ、構成中の「ニッスイ」の文字より、「ニッスイ」の称呼を生ずるほか、「活」及び「いき」の文字より、「カツ」及び「イキ」の称呼、「活(いきること)」の観念を生ずるものである。
 他方、引用A商標は上記の通り「勝」の文字よりなるものであるから、これより「カツ」の称呼、「勝つこと、勝利」の観念を生ずるものである。
 つぎに、引用B商標は、上記の通り「粋」の文字よりなるものであるから、これより「イキ」の称呼、「粋(気持ちや身なりのさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気をもっていること)」の観念を生ずるものである。
 ところで、一般に商標が類似するかどうかは、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきものであり、その類否判断をするに当たっては、両商標の外観、称呼、観念を観察し、それらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであって、上記3要素の特定の一つの対比のみによってなされるべきものではないと解されるものである。
 そこで、本願商標と引用A商標を比較するに、両者は「カツ」の称呼において同じではあるが、外観において明らかに相違し、観念においても、本願商標の「活(いきること)」と、引用A商標の「勝つこと、勝利」とは、明確に区別できるものである。
 つぎに、本願商標と引用B商標を比較するに、両者は、「イキ」の称呼において同じではあるが、外観において明らかに相違し、観念においても、本願商標の「活(いきること)」と「粋(気持ちや身なりのさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気をもっていること)」とは、明確に区別できるものである。
 してみると、本願商標と引用各商標とは、称呼の点において一致するとしても、両商標の外観及び観念において著しく相違するものであるから外観、称呼及び観念を総合的に考察すると、本願商標と引用各商標は、商品の出所について誤認混同を来すおそれのないものであって、全体として類似の商標とみることはできないというのが相当である。
 したがって、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、取り消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '04/09/12