最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「EM・X」は、きわめて簡単でありふれた標章のみからなる商標ではない、と判断された事例
(不服2002-5117、平成15年4月9目審決、審決公報第42号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「EM・X」の欧文字と中黒とを標準文字としてなり、第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」を指定商品として、平成13年2月27日に登録出願されたものである。
 そして、願書記載の指定商品については、当審において平成14年10月11日付け手続補正書により、第29類「清涼飲料,果実飲料」と補正されたものである。


2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、「この商標登録出願に係る商標は、商品の品番、規格、型式等を表す記号、符号表示の一類型と認められるローマ字の二文字『EM』及び一文字『X』とを中黒で連結して『EM・X』と表してなるものであるから、これは極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認める。したがって、この商標登録出願に係る商標は商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、前記の通り、「EM・X」と横書きに書してなるものであるところ、いずれの欧文字も同一の書体で同一の大きさで書され、外観上まとまりよく一体的に表されているものである。また、これが本願の指定商品を取り扱う分野において、商品の品番、記号等を表示するものとして普通に使用されている事実を発見することができなかった。
 してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用するときは、自他商品の識別標識としての機能を有するものと判断するのが相当である。
 したがって、本願商標をきわめて簡単でありふれた標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第5号に該当するとした原査定は、取り消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって結論の通り審決する。


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B. 商標「」は、きわめて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標ではない、と判断された事例
(不服2001-18341、平成15年4月30日審決、審決公報第42号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上に示す通りの構成よりなり、第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,医療用腕環,失禁用おしめ,人工授精用精液,乳児用粉乳,乳糖,はえ取り紙,防虫紙」を指定商品として平成12年7月11日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、格別特異とは認められない書体で表された『S』のアルファベット1文字に灰色の色彩を施したものであるが、アルファベット1文字は商品の規格、品番等を表す記号・符号として採択され、取引において普通に使用されているものであるから、本願商標をその指定商品に使用しても商品の規格、品番『S』の商品であることを理解、把握されるにすぎないので、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であると認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上に示す通り、アルファベットの「S」の文字を厚みを持たせて立体的に表し、さらに、これを右前方より斜めに描いてなるものであって、商品の記号・符号等に使用される構成態様の域を脱する程度に図案化されたものというのが相当である。
 してみれば、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた商標とはいい難く、自他商品の識別標識としての機能を十分に果し得るものである。
 したがって、本願商標を商標法第3条第1項第5号に該当するとして拒絶した原査定は妥当ではなく、取り消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '04/09/07