最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「」は、ASの文字と図形との組合せ全体をもって識別力を発揮しているものであるから、構成中「AS」から独立した称呼は生じないとして、引用商標「アズ/as」等とは非類似と判断された事例
(平成11年審判第16138号、平成15年5月13日審決、審決公報第43号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、第6類の願書記載の通りの商品を指定商品として、平成10年5月28日に登録出願されたものである。

2.引用商標
 原査定において、本願商標の拒絶の理由に引用した登録第1678415号商標は、「アズ」の片仮名文字「as」の欧文字を筆記体にて二段に書してなり、登録出願日、設定登録日及び商品の区分並びに指定商品は、商標登録原簿記載の通りである(以下の引用商標についても同じ。)。登録第2205429号商標は、「AS」「AZ」の欧文字と「アズ」の片仮名文字を三段に書してなり、登録第2409198号商標及び登録第2543870号商標は、「アズ」の片仮名文字を書してなり、登録第2605526号商標は、「AS」の欧文字と「アズ」の片仮名文字を二段に書してなるものである(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。

3.当審の判断
 本願商標は、上掲に示す通り、月を想起させるが如き図形の下に「AS」の欧文字を表した構成からなるものである。
 しかして、構成中「AS」の文字部分は、欧文字2字からなる、極めて簡単かつありふれた標章であって、それ自体では自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、該文字部分のみを捉えて取引に資されることはないものと見るのが相当である。
 これに対し、引用商標は「アズ」の片仮名文字部分から「アズ」の称呼を生ずるものである。
 そうとすれば、本願商標は、あくまでも、ASの文字と図形との組合わせ全体をもって識別力を発揮しているものというべきであるから、本願商標の構成中「AS」の文字部分のみを捉えて、単に「アズ」の称呼をも生ずるとし、そのうえで、本願商標と引用商標とが「アズ」の称呼において類似するものとして、本願商標を商標第4条第1項第11号に該当するとした原査定は妥当ではなく、その理由をもって両商標を類似のものとすることはできない。
 また、このほか外観、観念において両商標を類似とすべき事由は見出せない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「シャープファイブ」は、同書、同大で一連に表されていて、構成全体をもって一体不可分のものと理解され、「シャープ」の文字部分のみでは認識されないから、その指定商品に使用しても、シャープ株式会社又は同人と関係ある者であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないと判断された事例
(不服2001-1390、平成15年6月2日審決、審決公報第43号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「シャープファイブ」の片仮名文字を標準文字により書してなり、第9類「EPレコード,LPレコード,録音済みの磁気カード・磁気シート及び磁気テープ,録音済みのコンパクトディスク,録音済みの光磁気ディスク,録音済みのデジタルオーディオテープ,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,録画済み光学ディスク,録画済み磁気ディスク,録画済み光磁気ディスク,録画済みデジタルビデオディスク」を指定商品として、平成11年12月14日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、シャープ株式会杜が、本願出願より以前に電気通信機械器具等に使用して著名な「シャープ」の文字をその構成中に有してなるので、これをその指定商品に使用するときは、恰も当該商品が上記会社或いは上記会社と組織的に何らかの関連がある者の業務にかかる商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該出する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は前記の構成よりなるところ、各構成文字は、それぞれの文字が同書、同大で一連に表されていて、これより「シャープ」の文字部分のみが独立して認識されるものとはいえないものであり、これより生ずると認められる「シャープファイブ」の称呼も格別冗長というべきものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、構成全体をもって、一体不可分のものと理解されるとみるのが相当である。
 してみれば、本願商標は、その構成中の「シャープ」の文字部分のみでは認識されないものであり、本願商標を、その指定商品に使用しても、原審指摘の会社又は同人と関係ある者であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
 したがって、本願商標を商標法第4条第1項第15号に該当するとした原査定は、取り消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '04/09/07