最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「キックターゲット」は株式会社東京放送のテレビ番組によって放映されたゲームの名称として知られているとしても、請求人が商標として採択、使用することが、社会の秩序を混乱させるおそれがあるものとは認められないと判断された事例 (不服2000-11457、平成15年7月7日審決、審決公報第44号)
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1.本願商標 |
本願商標は、「キックターゲット」の文字を標準文字とし、第9類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成11年3月8日に登録出願されたものである。その後、指定商品については最終的に「サッカーボールを使って複数枚のパネルを打ち抜く競技を内容とするコンピュータプログラム,サッカーボールを使って複数枚のパネルを打ち抜く競技を内容とする遊園地用機械器具,サッカーボールを使って複数枚のパネルを打ち抜く競技を内容とする映写フィルム・スライドフイルム・録画済みビデオディスク及びビデオテープ,サッカーボールを使って複数枚のパネルを打ち抜く競技を内容とする家庭用テレビゲームおもちゃ」と補正されたものである。 |
2.当審における拒絶の理由 |
当審において、「本願商標は、株式会社束京放送(TBS)が放映するテレビ番組『筋肉番付』におけるサッカーボールを使用したゲームの名称として知られている『キックターゲット』を標準文字で表したものであるところ、同杜の承諾を得たものとは認められず、その知名性にフリーライドするものであって、これをその指定商品に使用するときは、商道徳に反し、ひいては、公の秩序を害するおそれがあるものと認める。 したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨の拒絶の理由を通知した。 |
3.当審の判断 |
本願商標は前記した通り、「キックターゲット」の文字を標準文字としてなるところ、その「キックターゲット」の文字は、株式会社束京放送(以下、「TBS」という。)が放映するテレビ番組「筋肉番付」におけるサッカーボールを使用したゲームの名称として知られているものであり、本願商標はそのゲームの名称を表したものと認められる。 しかしながら、請求人(出願人)提出の意見書によると、テレビ番組「筋肉番付」及びその中の一つの競技である「キックターゲット」は、請求人の代表者Aにより、企画、プロデュースされたものであること、TBSは、A個人の創作したアイデア・着想・著作物に関する知的財産権は請求人が管理し、必要に応じて請求人が商標権などの出願を行うことを許可していることが認められる。 以上の事実によれば、本願商標を構成する「キックターゲット」の文字が、TBSのテレビ番組によって放映されたゲームの名称として知られているものであるとしても、これを請求人(出願人)が商標として採択、使用することが社会の秩序を混乱させるおそれがあるものとは認められないから、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標ということはできない。 したがって本願商標は、上記2の当審が通知した拒絶の理由には該当しないものとなった。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「」は、商品の品番、型式等を表示する記号・符号として、取引上類型的に使用されているとはいえないから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とはいえないと判断された事例 (平成11年審判第15648号、平成15年6月24目審決、審決公報第44号)
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1.本願商標 |
本願商標は上掲の通りの構成よりなり、第11類「製氷機,氷販売機,その他の冷凍機械器具」を指定商品として、平成9年6月13日に登録出願、その後、指定商品については「製氷機,その他の冷凍機械器具」として補正されたものである。 |
2.原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「商品に記号・符号として用いられる『CM』に本願指定商品との関係では、立体(体積)を意味する『3』とを一連にして書してなるものであるから、これは、記号・符号に類型するものと認められ、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断する。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
3.当審の判断 |
本願商標は、上掲の通り欧文字の「CM」文字の右肩部に数字の「3」を小さく書してなるものであり、かかる構成態様からなる標章が、商品の品番、型式等を表示する記号・符号として取引上類型的に使用されているものといえないものであり、また、本願指定商品を取り扱う業界において、これが商品の品番、型式等を表す記号・符号として普通に使用されている事実も見出すことができなかった。 してみれば、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とはいえず、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものである。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、取り消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |