最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「黒人」は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字等からなるものではなく、また、その指定商品について使用することが社会公共の利益・社会の一般的道徳観念に反するものではないなどと判断された事例
(不服2000-1826、平成15年8月7日審決、審決公報第46号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「黒人」の文字を書してなり、第3類「洗浄剤,つや出し剤,擦り磨き剤,研磨剤,せっけん類,練り歯磨き,その他の歯磨き,口内洗浄剤(医療用のものを除く。)」及び第21類「歯ブラシ,電気式歯ブラシ,ようじ,歯及び歯茎の洗浄用の水射出器具」に属する商品を指定商品として、平成9年6月3日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定において、「本願商標は、『黒人』の文字よりなるものであるところ、これをその指定商品に使用することは、黒人を非常に不快にならしめ、傷つけ、黒人に対する人権的偏見と差別を助長・拡大するものであり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する」旨認定し、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、「黒人」の文字よりなるところ、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものでなく、また、本願商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は、社会の一般的道徳観念に反するものではなく、さらに、他の法律によってその使用が禁止されているものとは認められない。
 そして、本願商標をその指定商品に使用しても、直ちに黒人に対する人権、偏見及び差別を助長・拡大することになるものでもない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく、取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「FF(標準文字)」は、商品の品番等を表示する記号、符号の一類型ではなく、自他商品識別標識として機能していると判断された事例
(不服2000-10880、平成15年9月11目審決、審決公報第47号,1-1390、平成15年6月2日審決、審決公報築43号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「FF」の文字を標準文字で書してなり、第9類に属する願書記載の通りの商品を指定して、平成11年3月4日に登録出願、その後、指定商品については、審判請求と同時にした同12年7月17日付手続補正書により、第9類「パーソナルコンピュータゲーム用のプログラムを記憶させたCD-ROM及びROMカセット,家庭用テレビゲームおもちゃ」と補正されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、商品の品番、等級等を表示する記号、符号として一般に使用されている欧文字2文字の一類型と認められる「FF」の文字を書してなるにすぎないものであるから、これは極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認める。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第5号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 請求人の主張の全趣旨及び同人提出の甲各号証によれば、補正後の指定商品である家庭用ゲームソフトの分野においては、「FF」の文字は、請求人の業務に係るゲームソフトとして著名な「ファイナルファンタジー(FINAL FANTASY)」の略称として、取引者、需要者間において、広く知られているものと認められる。
 また、「FF」の文字が、当該商品の分野において、商品の記号又は符号として一般に使用されている事実は発見できなかった。
 してみれば、本願商標は、単に、商品の品番等を表示する記号、符号というよりも、むしろ、自他商品識別標識である商標として機能しているものとみるのが相当である。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当ではなく、取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '04/09/05