最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「家の一生お世話システム(標準文字)」は、役務の質を表示するものではなく、役務の質について誤認を生じさせるおそれもないと判断された事例 (不服2001-14778、平成16年3月8日審決、審決公報第52号)
|
1.本願商標 |
本願商標は、「家の一生お世話システム」を標準文字で書してなり、第37類「建物の修理又は保守,建物の修理又は保守に関する情報の提供,建物の修理の仲介,建築一式工事,しゅんせつ工事,土木一式工事,舗装工事,石工事,ガラス工事,鋼構造物工事,左官工事,大工工事,タイル・れんが又はブロックの工事,建具工事,鉄筋工事,塗装工事,とび・土工又はコンクリートの工事,内装仕上工事,板金工事,防水工事,屋根工事,管工事,機械器具設置工事,さく井工事,電気工事,電気通信工事,熱絶縁工事,建築設備の運転,建築物の外壁の清掃,窓の清掃,床敷物の清掃,床磨き」を指定役務として、平成12年4月13日に登録出願されたものである。 |
2.原査定の拒絶の理由の要点 |
現査定は、「本願商標を指定役務との関係においてみると、『新築した家屋をその家屋が使用できなくなるまで修理や保守等の世話をするシステム』の意味合いを表したと理解し把握させるに止まるものであるから、これをその指定役務に使用した場合、該商標に接する需要者は、単に役務の質(内容)を誇示したと認識するにすぎず、自他役務の識別標識としての機能を果たすものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨を認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
3.当審の判断 |
本願商標は、「家の一生お世話システム」の文字を書してなるものであるところ、全体として原査定説示の如き意味合いを認識することがあるとしても、暗示的なものにとどまり、直ちに役務の質を表示するものとは認められないものであり、当審において職権をもって調査するも、本願の指定役務の質を表示させるものとして取引上普通に使用されているという事実は見出せなかった。 したがって、本願商標は、これをその指定役務について使用しても、役務の質を表示するものではなく、また、役務の質について誤認を生じさせるおそれもないから、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして拒絶をすべきものとすることはできない。 その他、政令で定める期間内に、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
B. 商標「ニューヨークダイアリー/NewYorkDiary」は、「アメリカ製の商品以外の商品」に使用しても品質の誤認を生じないと判断された事例 (不服2002-13120、平成16年3月4日審決、審決公報第52号)
|
1.本願商標 |
本願商標は、「ニューヨークダイアリー」と「NewYorkDiary」の文字を上下二段に横書きしてなり、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成13年2月9日に登録出願されたものである。 |
2.原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、その構成中『ニューヨーク』『NewYork』の文字を含むものであるから、これを本願指定商品中『アメリカ製』の商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について、誤認・混同を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨を認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
3.当審の判断 |
本願商標は「ニューヨークダイアリー」と「NewYorkDiary」の文字よりなるところ、「ニューヨーク」及び「NewYork」の文字部分が米国の著名な都市名であることは認められるとしても、かかる構成にあっては、該「ニューヨーク」及び「NewYork」の文字部分が後半の「日記」を意味する「ダイアリー」及び「Diary」の文字部分を形容詞的に修飾しているものと認められる。よって、「ニューヨーク」及び「NewYork」と「ダイアリー」「Diary」とを分離して把握されるというよりは、全体として「ニューヨークでの日記」というが如き意味合いの一連の造語を形成しているものというのが相当である。 してみれば、該「ニューヨーク」及び「NewYork」の文字部分は、商品の品質を表すものということができないから、本願商標は、商品の品質について誤認を生じさせるおそれのないものといわざるを得ない。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものでなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |