最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「クロスキャスト/CROSS CAST」は、まとまりよく一体となって表されており、称呼も冗長でな<一連に称呼し得、引用商標「CROSS」が国際的に著名となっているとしても、本願の指定商品「釣り具」と「文房具類」とは、構造、機能、用途、用法、取引系統等を異にするから、商品の出所について混同を生じさせる虞はない、と判断された事例 (不服2004-2479、平成16年5月20日審決、審決公報第55号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「クロスキャスト」の片仮名文字及び「CROSS CAST」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、第28類「釣り具」を指定商品として、平成15年6月20日に登録出願されたものである。 |
2 原査定の拒絶理由 |
「本願商標は、本願の出願前においてアメリカ合衆国A. T. CROSS Companyが、その自己の業務に係る商品『文房具類(万年筆、ボールペン)』に『CROSS』(発音「クロス」)と認められる商標を使用しており、そのような国際的商取引の場裡にあって、本顧出願人が自己の業務に係る本願指定商品に、『クロス』『CROSS』を主要部とし、その後分に、品質呼称に用いられる、指定商品の使用の方法名の『投射、(水に)釣り糸を投げ込む(用)』を意味する『キャスト』『CAST』の文字を書し、前分に要部と容易に認められる『クロス』『CROSS』の文字からなる本願商標を商標法によって権利設定し、これを使用するときは、その本願指定商品に接する需要者が、たとえ、前記引用の国際著名な法人の業務に係る商品であると認識しなくても、本願指定商品が前記法人の子会社等の関係にある事業者(推認される前記法人と関連を有する法人)の業務に係る商品であると誤認し、実際には存在Lない者が出所として推定され、商品の出所について広義の混同を生ずるおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。 |
3 当審の判断 |
本願商標は、「クロスキャスト」の片仮名文字と「CROSS CAST」の欧文字とを上下二段に横書きしてなるところ、構成各文字がまとまりよく一体となって表されているものであって、かつ、上段の片仮名文字が下段の欧文字の表音を表したとみるのが自然であり、これより生ずる「クロスキャスト」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、本願商標は、その構成文字全体をもって一体不可分の造語よりなるものと認識され把握されるものと見るのが相当である。 そして、A. T. CROSS Companyが文房具類に使用する「CROSS」の商標(以下、「引用商標」という。)が、国際的に著名なものとなっているとしても、上記構成からなる本願商標と引用商標とは、明かに区別することができる別異の商標であって、しかも、本願の指定商品「釣り具」と「文房具類」とは、構造、機能、用途、用法、取引系統等を異にするものであるから、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者が引用商標を直ちに連想・想起するようなことはなく上記会社又は法人と経済的・組織的に何らかの関係を有するものの業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせる虞はないものというべきである。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当ではなく、取り消しを免れない。 その他、本願について拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「」は、商品の品番、型式等を表すための単なる記号、符号として理解されるとは言い難く、自他商品識別標識としての機能を果たすものであるから、商標法第3条第1項第5号に該当しないと判断された事例 (不服2002-3937、平成16年5月10日審決、審決公報第55号)
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1 本願商標 |
本願商標は、上掲の通りの態様よりなり、第28類「運動用具」を指定商品とし、平成12年12月26日に登録出願されたものである。 |
2 原査定の拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標は、数字の『3』と、加号又は符号の『+』とを結合して『3+』と普通に表してなるにすぎないから、これは極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」と認定判断し、本願を拒絶したものである。 |
3 当審の判断 |
本願商標は、上掲の通りの数字の「3」とその右肩に小さく加号又は符号の「+」とを一体的に表記してなるものであるところ、かかる構成態様からなる標章は、商品の品番、型式を表す記号、符号として一般に使用されているものとは言い難いものであり、また、本願指定商品を取り扱う業界において、これが商品の品番、型式等を表す記号、符号として普通に使用されている事実も見出すことができなかった。 そうとすれば、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する収引者、需要者をして、商品の品番、型式等を表すための単なる記号、符号として理解されるとは言い難く、自他商品識別標識としての機能を果たすものといわざる得ない。 したがって、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とはいえないものであるから、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取り消しを免れない。 よって結論の通り審決する。 |