最近の注目審決・判決を紹介します。

 商標「ロイヤルフォートスウェーデン」は、「スウェーデン」の文字が「スウェーデン王国」に通じ、全体で「スウェーデンの威厳のある砦・城塞」程度の意昧合いが看取されるとしても、スウェーデン国家の威信を損なうものではなく、スウェーデン国家・国民を侮辱するものでもないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではなく、また、上記意昧合いは抽象的で具体的な役務の質を直接的に表示するものではないし、その指定役務について使用しても、「スウェーデン国と何等かの関係のある役務」の如く誤認する虞もないから、同項第16号にも該当しない、と判断された事例
(不服2002-10654、平成16年6月17日審決、審決公報第56号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「ロイヤルフォートスウェーデン」の文字を書してなり、第36類及び第37類に属する願書記載の通りの役務を指定役務として、平成13年2月9日に登録出願されたものである。
 そして、願書記載の役務については、平成14年8月30日受付の手続補正書により、第36類「建物の管理、建物賃借の代理又は媒介、建物の貸与、〜」第37類「建築一式工事、しゅんせつ工事、土木一式工事、〜」と補正されたものである。


2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、要旨以下のように認定、判断し、本願を拒絶したものである。
(1)本願商標は、そあ構成中に「スウェーデン」の文字を書してなるところ、このようなものを」私人が商標として使用することはスウェーデン国家の威信を損ない、ひいては、国際信義にも反し、登録することは穏当でないものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)本願商標は、その構成中に「スウェーデン」の文字を有してなるから、これをその指定役務に使用するときには、スウェーデン国と何らかの関連のある役務であるかの如く、役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第16号に該当する。


3.当審の判断
 本願商標は前記構成よりなるところ、「ロイヤル」及び「フォート」の文字がそれぞれ「威厳のある、素晴らしい」及び「砦、城塞」等の意味を有する英語「royal」及び「fort」の読みを片仮名文字で表したものと認められ、「スウェーデン」の文字が北ヨーロッパスカンディナヴィア半島東部を占める立憲君主国の国名「Sweden」の片仮名表記と認められるものであるから、これらを一連に書した「ロイヤルフォートスウェーデン」の構成文字全体からは、「スウェーデンの威厳の有る砦・城塞」程度の意味合いが看取されるものと認められる。
 しかしながら、たとえ、本願商標がその構成中に前記外国の国名を有してなるとしても、それが直ちにスウェーデン国家の威信を損なうとまでは言うことはできず、また、「ロイヤルフォートスウェーデン」の構成全体からも、ことさらスウェーデン国家、或いは同国民を侮辱しているということもできない。
 そうとすると、本願商標を使用することが、その国の尊厳を害するおそれを生じ、また、国際信義に反するとする相当の理由はないものであり、本願商標は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標とは認められない。
 また、本願商標の構成中「スウェーデン」の文字からスウェーデン王国を認識し、その全体から「スウェーデンの威厳のある砦・城塞」などの抽象的な意味合いを看取することがあるとしても、本件商標のかかる一連の構成各文字及びこれらの意味合いをもっては、直ちに、如何なる特徴の役務であるかを想起し認識し得るものとはいい難く、本願指定役務との関係において「役務の提供場所、役務の対象物及びその提供の内容」等役務の質を直接的かつ具体的に表しているものとは認めがたい。
 してみれば、本願商標は、その構成中に「スウェーデン」の文字を有し、これが「スウェーデン王国」に通じるとしても、そこから直ちに提供される具体的な役務の質が特定できないこと前述の通りであるから、これをその指定役務に使用しても、原審説示の「スウェーデン国と何らかの関係のある役務」の如く誤認する虞があるということはできず、結局、本願商標をその指定役務に使用しても、役務の質について誤認を生じさせる虞はないものといわなければならない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号及び同第16号に該当するとしてその出願を拒絶した原査定は、妥当でなく取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって結論の通り審決する。


〔戻る〕
鈴木正次特許事務所

最終更新日 '05/1/11