最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 別掲商標中「こがねもち」の文字部分は、商品の品質等を表示し、自他商品の識別機能を有しないため、「コガネ」の称呼が生じないから、当該商標は引用商標「黄金」とは称呼上非類似と判断された事例 (不服2002-2243、平成16年6月29日審決、審決公報第56号)
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1 本願商標 |
本願商標は、別掲の通りの構成よりなり、第30類に属する願書記載の通りの商品を指定商品として平成12年12月22日に登録出願されたものである。 その後、指定商品については同13年11月14日付手続補正書により、第30類「もち」と補正されたものである。 |
2 引用商標 |
原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第544359号商標は、「黄金」の文字を縦書きしてなり、昭和27年2月27日登録出願、第43類の商標登録原簿記載の通りの商品を指定商品として、同34年11月16日に設定登録され、その後、平成12年5月31日に指定商品を第30類「甘納豆、あられ、・・・パン、もち」に書き換える指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 |
3 当審の判断 |
本願商標は、別掲の通りの構成よりなるところ、その構成中の「越後きねつき」の文字部分は、「越後(旧国名、今の新潟県地方)産のきねでついた」の意味合いを認識させ、商品の産地、製造方法を表し、また、その構成中の「こがねもち米100%」の文字部分は「こがねもち米を100%使用したもの」の意味合いを認識させ、さらに、本願商標の指定商品との関係よりすれば、その構成中の「こがねもち」の文字部分は、「水稲もち玄米」の品種名を表したものと認識、理解されるものと言わなければならない。 そうとすれば、「こがねもち米100%」及び「こがねもち」の文字部分は、商品の品質、原材料を表示するにすぎないから、自他商品の識別標識としての機能を有しないと言わざるを得ない。 してみれば、本願商標は、その構成中の図形部分全体並びにその構成中の「たいまつ」の文字部分及びたいまつと思しき図形部分が、自他商品の識別標識としての機能を果たすものと認識され、該図形及び文字部分より生ずる「タイマツ」の称呼をもって取引に資されるというのが相当である。 したがって、本願商標より、「コガネ」の称呼を生ずるとし、その上で、本願商標と引用商標が称呼上類似するものとして、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、妥当でなく取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「T/Z」は、纏まりよく一体的に表され、また、欧文字と「/」(スラッシュ)を連結した表示が商品の記号、符号として使用されている実情も見出せないから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標に該当しない、と判断された事例 (不服2002-8624、平成16年6月28日審決、審決公報第56号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「T/Z」の文字を書してなり、第28類の商品を指定商品として、平成13年1月31日に登録出願されたものである。 |
2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、商品の品番・型番等を表示するための記号・符号として広く採択・使用されている欧文字二字の類型的使用として認められる『T』の文字と『Z』の文字とを『/(スラッシュ)』の記号で結合して一連に『T/Z』と書してなるに過ぎないから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるに過ぎず、自他商品識別標識としての機能を具備するものとは認め難いものであり、よって、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
3 当審の判断 |
本願商標は、前項1に述べた通り「T/Z」の文字を表してなるものであるが、その構成は「T」と「Z」の欧文字2文字の間に区切り符号等に用いられる「/」(スラッシュ)を配して纏まりよく一体的に表されており、また、欧文字と「/」(スラッシュ)記号を連結した表示が商品の記号、符号として必ずしも数多く使用されている実情も見出せないところである。 そうとすれば、上記構成からなる本願商標をその指定商品に使用しても、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とは言い難く、自他商品の識別標識として機能し得るものとみるのが相当である。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |