最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標(別枠@)は、その構成中「ゆず懐石」の文字より「柚子を主材とする懐石料理」の観念及び「ユズカイセキ」一連の称呼を生じ、「懐石」の文字のみが分離、抽出されることはないから、引用商標(別枠A)とは非類似と判断された事例 (不服2002-20247、平成16年9月3日審決、審決公報第59号)
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1.本願商標 |
本願商標は、上掲の通りの構成よりなり第30類「柚を用いたしょうゆ、柚を用いたぽん酢、柚を用いた化学調味料、柚を用いた香辛料」を指定商品として、平成12年10月25日に登録出願されたものである。 |
2.引用商標 |
本願商標の拒絶の理由に引用した登録第2698049号商標(以下、「引用商標」という。)は上掲の通りの構成よりなり、平成2年7月3日に登録出願、第31類「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」を指定商品として、同5年10月31日に設定登録されたものである。 |
3.当審の判断 |
本願商標は、上掲の通り、図形と文字とから構成されるところ、これらを常に一体のものとしてのみ把握しなければならない格別の事由は見出し難いものであり、これに接する取引者、需要者は構成中の図形に比して記憶し馴染みやすい「ゆず懐石」の文字部分を捉えて、取引に当たる場合も決して少なくないものというのが相当である。 そして、該「ゆず懐石」からは、「ゆず」の仮名文字が「食用・香味料用の『柚子』」を、また、「懐石」の文字が茶の湯で茶を出す前に出す簡単な料理、所謂「懐石料理」を容易に想起し、これらの文字を結合したものと認識するというのが自然であり、該文字部分よりは熟語的に無理なく「ゆず(柚子)を主材とする懐石料理」程度の観念を暗示させるものといえる。 してみると、本願商標は、構成中の「ゆず懐石」の文字から、「ゆず(柚子)を主材とする懐石料理」程度の観念と、構成文字に照応して「ユズカイセキ」の称呼を生ずるものであるというのが相当であって、その称呼も淀みなく一連に称呼できるものである。 そして、たとえ、構成中の「ゆず」の文字が、指定商品の品質を表す語であるとしても、これを捨象して、上述の観念及び称呼を越えて、単に「懐石」の文字部分のみを分離、抽出して看取し、取引に当たらなければならないといい難いものである。 そうすると、本願商標構成中「懐石」の文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を有するものとの前提で、本願商標と引用商標とを商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は妥当ではなく、取消を免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって結論の通り審決する。 |
B. 商標「らくらくポンプ」は、第12類の商品「自転車並びにそれらの部品及び付属品」について商品の品質等を表示するものではな<、一種の造語として自他商品の識別機能を有する、等と判断された事例 (不服2002-14684、平成16年9月27日審決、審決公報第59号)
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1.本願商標 |
本願商標は、「らくらくポンプ」の文字を横書きしてなり、第12類「自転車並びにそれらの部品及び付属品」を指定商品として、平成13年3月8日に登録出願されたものである。 |
2.原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は『らくらくポンプ』の文字を書してなるものであるが、「らくらく」は「たやすく、やすやすと」の意で、「ポンプ」は指定商品との関係では「自転車用空気入れ(ポンプ)」を意味する語と認められるので、全体としても「たやすく(楽に)空気を入れられる自転車用ポンプ」の意味合いを表すに止まり、これをその指定商品中、上記商品に使用しても単に商品の品質を表示したに過ぎないものと認める。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
3.当審の判断 |
本願商標は、前記の通りの構成よりなるところ、その構成中の「らくらく」の文字が「ゆったりしていて安楽なこと、たやすいさま」等の意味を有し、また、「ポンプ」の文字が「圧力の働きによって流体を送る装置」等の意味を有する語であるとしても、これらを組み合わせた本願商標の構成文字全体から具体的な商品の品質等を認識させるものとは言い得ないものであり、むしろ、特定の意味合いを看取し得ない」種の造語よりなるものというのが相当である。 また、「らくらくポンプ」の文字が、その指定商品の品質等を表示するものとして取引上普通に使用されているという事実も見出すこともできない。 してみれば、本願商標は、その指定商品について商品の品質等を表示するものではなく、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものといわなければならず、また、商品の品質の誤認を生じさせるおそれもないものである。 したがって本願商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって結論の通り審決する。 |