最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「」は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるというよりは、図案化された独特の図形として認識される、と判断された事例
(不服2002-16724、平成16年11月16日審決、審決公報第60号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、平成13年10月29日に登録出願、その指定商品は、第16類に属する願書記載の通りである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、商品の品番・規格等を表す記号・符号として一般に使用されている欧文字の『J』(下辺部を長く延ばしてなる)と認められるので、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上掲の通りアルファベットの「J」と思しき文字の下辺部を左方へ水平に長く延ばして表示してなるところ、該態様は、普通に採択される文字の表示態様の域を脱しているものといわざるを得ない。そうすると、これよりは商品の品番、規格などを表す記号、符号として用いられる程の極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるものと理解されるということはできず、むしろ、図案化された独特の図形として認識されると判断するのが相当であって、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものといわなければならない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


〔戻る〕


B. 標章「」は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして医療従事者のみならず、一般の取引者、需要者間にも広く認識されており、また、他人によって本願の指定商品に使用された場合には、これに接する取引者、需要者はその商品が恰も請求人又は請求人と何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第65条の4第1項第1号に該当するものとはいえない、と判断された事例
(不服2002-19612、平成16年11月9日審決、審決公報第60号)
 
1.本願標章
 本願標章は上掲の通りの構成よりなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く。)、薬剤、医療補助品」を指定商品とし、昭和51年4月2日に出願され、同57年3月31日に登録第620834号商標(以下「原登録商標」という。)の防護標章登録第1号として登録され、現に有効に存続しているものである。
 そして、原登録商標は、上記本願標章と同一の構成よりなり、昭和37年6月30日に登録出願、第10類「理化学機械器具、光学機械器具、写真機械器具」等を指定商品として、昭和38年7月13日に設定登録されたものであるが、その後、平成16年9月15日に書換登録がなされ、その指定商品が第1類「写真材料」、第5類「医療用腕環」、第9類「理化学機械器具、光学器械器具、写真機械器具、映画機械器具、測定機械器具」、第10類「医療用機械器具」及び第12類「車いす」となり、現に有効に存続しているものである。


2.原査定における拒絶の理由
 原査定は、「本願標章は、他人がこれを本願指定商品に使用しても商品の出所について、混同を生じさせる程に広く認識されているものとは認められない。したがって、本願は、商標法第65条の4第1項第1号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願標章は、前記の通り原登録商標と同一の構成よりなり、請求人(出願人。以下、同じ。)が原登録商標の権利者と同一人であることは、その標章を表示した書面及び商標登録原簿の記載に徴して明らかである。
 原登録商標については、請求人が提出した甲各号証によれば、請求人によりその指定商品中「医療用機械器具」について永年使用され、その間、新聞、テレビ等の媒体を通じて広範な宣伝、広告活動が行われた緒果、今日においても、請求人の業務に係る商品を表示するものとして医療従事者のみならず、一般の取引者、需要者間にも広く認識されていると認め得るものである。
 そして、本願の指定商品である「化学品(他の類に属するものを除く)、薬剤、医療補助品」は、いずれも薬種問屋、薬局ルートで販売されるものであり、病院・医院などで使用されるものであること、また、近年、企業の多角経営化ないしは異業種への進出の傾向があることなどを総合勘案すると、原登録商標と同一態様よりなる本願標章が他人によって本願の指定商品について使用された場合には、これに接する取引者、需要者は、その商品が恰も請求人又は請求人と何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
 したがって、本願は、商標法第65条の4第1項第1号に該当するものとはいえない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


〔戻る〕
鈴木正次特許事務所

最終更新日 '05/10/10