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 別掲の本願商標中「三輪素麺」の文字部分は、自他商品識別機能を有しない記述的な部分と認められるから、本願商標の要部の一つということはできず、一方、引用商標1「」及び引用商標2「」は、いずれも商標法第3条第2項の適用を受けた登録商標であることからすれば、「三輪素麺」及び「三輪そうめん」の文字部分を抽出し、本願商標中の「三輪素麺」の文字部分を抽出して商標との類否判断をすることは適当ではないとして、本願商標と引用商標1・2とは互いに非類似と判断された事例
(不服2003-7171、平成16年11月16日審決、審決公報第60号)
 
1.本願商標
 本願商標は、別掲の通りの構成よりなり第30類「そうめん、そうめんつゆ」を指定商品として、平成13年10月2日に登録出願され、その後、指定商品については、願書における平成14年6月20日付け手続補正書により、第30類「そうめんのめん」に補正されたものである。

2.原査定の引用商標
 原査定において、本願の拒絶理由に引用した登録商標は、次の(1)及び(2)に示す通りである。
 (1) 登録第2219632号商標(以下、「引用商標1」という。)は、昭和56年7月8日に登録出願、上掲の通り、「三輪素麺」の文字を横書きしてなり、第32類「そうめん」を指定商品として、平成2年3月27日に設定登録され、現に有効に存続している。
 (2) 登録第2219633号商標(以下、「引用商標2」という。)は、昭和56年7月8日に登録出願、上掲の通り、「極寒手延」「三輪そうめん」の各文字を上下二段に書してなり、第32類「そうめん」を指定商品として、平成2年3月27日に設定登録され、現に有効に存続している。


3.当審の判断
 本願商標は、別掲の通りの構成よりなるところ、その構成中「三輪素麺」の縦書きの文字についてみるに、「三輸」の文字は、その指定商品との関係において、奈良県桜井市の三輸地方を、「素麺」の文字は、指定商品の普通名称「そうめんのめん」をそれぞれ指称するものと認められる。
 そうとすれば、本願商標の接する取引者、需要者は、その構成中「三輪素麺」の文字部分より、「三輪地方で製造されたそうめんのめん」の意味合いを把握、理解するものとみるのが相当である。
 してみれば、本願商標中「三輪素麺」の文字部分は、自他商品識別機能を有しない記述的な部分と認められるから、この文字部分を本願商標の要部の一つということはできない。
 他方、引用商標1及び2は、上掲の通りよりなるところ、引用商標1及び2は、商標法第3条第2項の適用を受けた登録商標であるが、その適用にあたっては、いずれの引用商標も「三輪素麺」及び「極寒手延」「三輸そうめん」の各文字の具体的配置、態様、外観等の全体構成が一体となった一個の商標として、初めて自他商品識別機能を有するに至っているものというべきである。
 そこで、本願商標と引用商標1及び2とを対比するに、先ず、本願商標と引用商標1をみるに、本願商標中の「三輸素麺」の文字部分と引用商標1の「三輪素麺」の文字に照応した「ミワソウメン」の称呼及び「三輪地方で製造されたそうめん」の観念が同一であるが、その他の共通する部分はないものと認められる。
 そして、本願商標中の「三輪素麺」の文字部分は、前述の通り、自他商品識別機能を有しない部分であるから、本願商標と引用商標1とが類似する商標とすることはできない。
 次に、本願商標と引用商標2をみるに、引用商標2は、それを構成する「極寒手延」及び「三輪そうめん」の各文字が不可分一体の一個の商標とし商標法第3条第2項の適用を受けた登録商標であることからすれば、「三輪そうめん」の文字部分を分離抽出して、本願商標中の「三輪素麺」と類否判断をすることは適当ではない。
 そうとすれば、引用商標2は書された文字に相応して「ゴクカンテノベミワソウメン」の称呼及び「極めて寒い時期に三輪地方で製造された手延べそうめん」程の観念を生ずるのに対し、本願商標中の「三輪素麺」の文字部分からは、前記の通り「ミワソウメン」の称呼及び「三輪地方で製造されたそうめん」の観念を生ずるから、両者は、観念において近似するところがあるにしても外観及び称呼において顕著な差異を有する上、他に共通する部分はないものと認められる。
 そして、本願商標中の「三輪素麺」の文字部分は、前述の通り、自他商品識別機能を有しない部分であるから、本願商標と引用商標2とが類似する商標とすることはできない。
 したがって、本願商標と引用商標1及び2とは、いずれも類似する商標とはいえないから、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定の拒絶の理由は、妥当でなく、その理由をもって拒絶すべきでない。
 その他、政令で定める期間中に本願について拒絶の理由を発見できない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '05/10/10