最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「」は、構成中「満州」の文字が、ラーメン店の実情により、中国東北部一帯の旧地域名を認識させるものであって「満州国」を認識させるものではないから、国際信義に反するものではなく、商標法第4条第1項第7号に該当しない、と判断された事例 (不服2002-19921、平成16年12月1日審決、審決公報第62号)
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1.本願商標 |
本願商標は、上に示す通りの構成よりなり、第42類「ラーメンを主とする飲食物の提供」を指定役務として、平成13年8月6日に登録出願されたものである。 |
2.原査定における拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標は、その構成中に第二次世界大戦前中国東北部に存在していた『満州国』を表すものとしか認識し得ない『満州』の文字を有してなるから、これを商標として採択使用することは国際信義に反するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
3.当審の判断 |
本願商標は上に示す通り、色彩を施した図形を左端に描き、その右に振り仮名を付して「満州ニラら一めん」の文字をバランス良く書してなるものである。 ところで、本願の指定役務である「ラーメンを主とする飲食物の提供」を役務とする所謂ラーメン店においては、そのラーメンの風味が、四川風、広東風等であることを示すために、また、当該風味の料理を主として提供する店であることを示すために、例えば、中国の地方の名称を店名に入れて表記し、「四川ラーメン」、「広東ラーメン」のように使用されていることが多く見受けられる実情がある。 してみれば、本願商標は、上記した通りの構成よりなるものであるから、その構成中に書された「満州」の文字は、四川、広東等と同様に中国東北部一帯の旧地域名を表したものと認識されると見られるのが相当である。 そうとすれば、本願商標は、その構成に係る「満州」の文字は「満州国」を認識させるものではなく、前述の通り認定し得るものであるから、これを採択使用することが国際信義に反するものとは認められない。 他に、本願商標は、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字又は図形からなるものではなく、また、本願商標を指定役務に使用することが社会公共の利益・一般道徳観念に反するものとは認められない。 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するということはできないから、これを理由に本願を拒絶した原査定は、妥当でなく取り消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「カフェ丼」は、特定の商品の品質、用途、製造場所、種類等を具体的に表示するものではなく、自他商品識別機能を有するから、商標法第3条第1項第3号に該当しない、と判断された事例 (不服2003-10921、平成16年12月10日審決、審決公報第62号)
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1.本願商標 |
本願商標は、「カフェ丼」の文字を書してなり、第29類「どんぶりもののもと」を指定商品として、平成14年9月6日に登録出願されたものである。 |
2.原査定の拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標は、『喫茶店の丼』との意味合いを認識される『カフェ丼』の文字を書してなるから、これをその指定商品に使用しても、喫茶店のどんぶりもののもとであるとの、商品の品質、用途、製造場所、種類を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
3.当審の判断 |
本願商標は、上記の通りの構成よりなるところ、たとえその構成中の「カフェ」の文字部分が「喫茶店」等の意味を有する英語「cafe」の読みを片仮名文字で表したものであって、また、「丼」の文字部分が、「丼飯の略称、深い厚手の陶製の鉢」等を表す語であるとしても、それぞれの語を「カフェ丼」と一連に表してなる文字が、全体として本願の指定商品との関係において、原審において説示するような、特定の商品の品質、用途、製造場所、種類等を具体的に表示するとまでは言い得ないばかりでなく、また、当審において職権をもって調査するも、本願指定商品を取り扱う業界において、これが原審説示の如き意味合いに認識、理解され、商品の品質等を表示するものとして取引上普通に使用されていると認めるに足る資料を発見することもできなかった。 してみれば、本願商標は、これをその指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を充分に果たし得るものといわなければならない。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |