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A. 商標「日住協」は、昭和44年設立後、改称を経て平成14年に特定非営利活動法人として認証・設立された「日本住宅管理組合協議会」の名称を直ちに想起し得る程度に著名性を獲得していたということができないから、他人の著名な略称と認めることはできない、と判断された事例
(不服2003-15997、平成17年7月28日審決、審決公報第69号)
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1.本願商標 |
本願商標は、「日住協」の文字を標準文字で表してなり、第16類「印刷物」及び第36類「建物の管理等」を指定商品及び指定役務として、平成14年9月10日に登録出願されたものである。
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2.原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、東京都千代田区神田須田町1−20所在の特定非営利活動法人『日本住宅管理組合協議会』の著名な略称である『日住協』の文字を書してなるものであり、かつ、その者の承諾を得ているものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3.当審の判断 |
本願商標は、前記1の通り、「日住協」の文字を書してなるものである。 そこで、当審において職権により調査するに、「NPO日住協」のホームページ(http://www.mansion-kanrikumiai.or.jp/)によれば、東京都千代田区神田須田町1−20所在の特定非営利活動法人「日本住宅管理組合協議会」は、昭和44年、その前身である「分譲住宅管理組合連絡協議会」(分住協)設立、同59年、「日本住宅管理組合連絡協議会」(日住協)と改称。その後、平成8年「日本住宅管理組合協議会」(日住協)と改称し、同14年に特定非営利活動法人として認証・設立されたものであることが確認できるものの、当協議会が、「日住協」の略称をもって、マンションの管理組合を支援する団体として活動して、広く知られていたとは認め難い。 そうすると、「日住協」の文字は、特定の他人の名称の略称を表示するものではなく、かつ、一般の取引者、需要者が、本願の登録出願時に「日住協」の文字より、直ちに特定の他人の名称を想起し得る程度に著名性を取得していたとはいうことはできない。 してみれば、本願商標は、他人の著名な略称であるということはできないから、これを理由に本願商標を商標法第4条第1項第8号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当ではなく、その理由をもって拒絶すべきものとすることはできない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「Regain」は、一般に知られている英語であって、三共株式会社の取扱商品「ドリンク剤」等と本願商榎の指定商品「履物」とは、その用途、性質等を著しく異にし、生産から流通に至るまでの取引事情も明らかに相違するから、出願人が本願商標をその指定商品に使用した場合に、三共株式会社又は同人と経済的、組織的に何等かの関係ある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所の混同を生ずる虞はない、と判断された事例 (不服2003-18501、平成17年8月10日審決、審決公報第69号)
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1.本願商標 |
本願商標は、「Regain」の文字を横書きしてなり、願書記載の通りの商品を指定商品として、平成14年9月26日に登録出願されたものである。
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2.原査定の拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標は、その構成中に東京都中央区所在の三共株式会杜が商品『薬剤』等に長年使用して著名な商標である『Regain』の文字よりなるものですから、これを出願人がその指定商品に使用するときは、これが恰も前記会杜の製造販売に係り、或いはこれと何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせる虞があるものと認めます。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当します。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
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3.当審の判断 |
本願商標は、上記の通り「Regain」の文字よりなるところ、該文字は原審適示の三共株式会社が商品「ドリンク剤、ビタミン剤、清涼飲料水」に長年使用して著名な商標である「Regain」の文字とは、同一の文字綴りからなるものと認められる。 しかし乍ら、「Regain」の文字(語)は、「(健康等を)回復する」等の意味合いを有する英語であり、かつ、一般に知られている語であって、造語とは認められないばかりでなく、しかも、三共株式会社の前記商品と本願商標の指定商品「履物」とは、その用途、性質等を著しく異にし、生産から流通に至るまでの間の取引事情も明らかに相違する異種・別個の商品といわなければならない。 そうとすると、たとえ、三共株式会社の多角化経営を考慮したとしても、出願人が本願商標をその指定商品に使用しても、三共株式会社又は同人と経済的、組織的に何等かの関係ある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所の混同を生ずる虞はないものというのが相当である。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |