最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「フェリーニ」は、これを映画或いは映画に使用する商品とは販売場所、流通経路を異にする第28類の指定商品に使用しても、取引者・需要者がイタリアの代表的な映画監督を想起、認識するとはいい難く、また、その構成自体がきょう激、卑猥、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないから、商標法第4条第1項第7号に該当しない、と判断された事例
(不服2004-17941、平成17年11月29日審決、審決公報第73号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「フェリーニ」の文字を標準文字として表してなり、第28類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成16年1月22日に登録出願されたものである。
 そして、指定商品は、平成16年8月13日付手続補正書により、補正されている。


2.原査定の拒絶理由
 原査定は、「本願商標は、映画『道』、『甘い生活』等の作品で知られるイタリアの代表的映画監督、フェデリコ・フェリーニ(1993年死去)の著名な略称である『フェリーニ』の片仮名文字よりなるものであるから、同人の遺族等の承諾を得ているものとは認められない本願商標を登録し、その指定商品に使用することは、同人と何等かの関係を有する者の製造又は販売に係るものと一般需要者に認識される虞があることとなり、公の取引の秩序を乱す虞があるといえるものである。また、同人の名誉と共にこの故人を慕うイタリア国民の感情を考慮すれば、これを出願人が自己の商標として採択し、使用することは、国際信義に反するものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、前記の通り「フェリーニ」の片仮名文字を表してなるところ、これが、イタリアの映画監督として知られる、Federico Fellini(フェデリコ フェリーニ 1920−1993)氏の略称であるとしても、本願商標を、映画或いは映画に使用する商品と、その販売場所、流通経路を異にする本願指定商品について使用するときは、商取引の場において、これに接する取引者・需要者が、直ちに前記映画監督を想起、認識するとはいい難いものである。
 また、本願商標は、その構成自体がきょう激、卑狸、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものでないことは明らかである。
 そうとすれば、本願商標はこれをその指定商品に使用しても、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものとはいえず、或いは、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は、一般に国際信義に反するということもできない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとした原査定は、妥当でなく取り消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


〔戻る〕


B. 商標「」は、仮名文字の一字「う」を基に一種独特のレタリングを施した特異な構成の図形商標と認識され、極めて簡単で、かつ、ありふれたものということはできない、と判断された事例
(不服2002-20370、平成17年11月17日審決、審決公報第73号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、平成13年3月22日に登録出願されたものである。

2.原査定の理由
 原査定は、「本願商標は、仮名文字の一字『う』を普通に用いられる域を脱しない程度の方法で書してなるものであるから、全体として極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなるところ、原査定指摘の「仮名文字の一字『う』を普通に用いられる域を脱しない程度の方法で書してなるもの」とみるよりは、むしろ、仮名文字の一字『う』を基にし、一種独特のレタリングを施した特異な横成よりなる図形商標とみるのが相当であり、かかる構成態様からして、極めて簡単で、かつ、ありふれたものということはできない。
 してみれば、本願商標は極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるものとはいえず、これをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を十分に果し得るものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、取り消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


〔戻る〕
鈴木正次特許事務所

最終更新日 '06/11/30