最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「みそ博士」(標準文字)は、取引者・需要者が公的に認定された博士号であるかの如く認識することはないから、一般の需要者の混乱を招き、もって公の秩序又は善良な風俗を害する虞はない、と判断された事例
(不服2004-20431、平成18年2月10日審決、審決公報第76号)
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1.本願商標 |
本願商漂は、「みそ博士」の文字を標準文字で書してなり、第30類に属する願書記載の通りの商品を指定商品として、平成15年8月19日に登録出願されたものである。
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2.原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、『みそ博士』の文字を書してなるところ、構成中の『みそ』の文字は、原材料、製造方法等から醸造学や微生物学の学問分野と密接な関係を有するものであり、そうした学問分野の研究において博士号を取得する場合も少なくないことからすれば、本願商標に接した取引者、需要者が『味噌の研究による博士号』の意を容易に想起させるものと認められるから、これを出願人が商標として採択し使用することは、恰もそうした研究に対して公的に認定された博士号であるかの如く、一般需要者の混乱を招き、もって公の秩序又は善良な風俗を害する虞があるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3.当審の判断 |
本顧商標は、「みそ博士」の文字よりなるから、その構成中に「博士」の文字を有するとしても、これから直ちに博士号の一種を表示したものと認識し把握されるものとはいい難いものである。 さらに、当審において職権をもって調査するも、「みそ博士」の文字が、原審説示の如く「みその研究による博士号」を表示するためのものとして、普通に使用されている事実を発見することもできなかった。 そうとすると、本願商標は、これを出願人が商標として採択し使用しても、これに接する取引者・需要者が公的に認定された博士号であるかの如く認識することはできないものであるから、一般需要者の混乱を招き、もって公の秩序又は善良な風俗を害する虞があるものと認めることはできない。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「湘南陶芸教室」(標準文字)は、同書、同大、等間隔で一体不可分に表現され、淀みなく一連に称呼し得、しかも、当該役務の取引分野においては「○○陶芸教室」の如く役務の主体の名称として使用されているものであり、一連一体の陶芸敦室の名称を表してなるものとみるのが相当であるから、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標ということはできない、と判断された事例 (不服2004-23086、平成18年2月20日審決、審決公報第76号)
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1.本願商標 |
本願商標は、「湘南陶芸教室」の漢字を標準文字にて書してなり、第41類「陶芸の教授、美術品の展示、陶芸製作施設の提供、陶芸製作に使用する材料及び道具の賃与」を指定役務として、平成15年12月11日に登録出願されたものである。
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2.原査定の拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標は、地方名と認識される『湘南』の文字と一般的に陶芸を教える事を意味する『陶芸教室』の文字を結合し、『湘南陶芸教室』と普通に用いられる方法で表示してなるものであるから、これを本願指定役務に使用しても、これに接する需要者は上記意味合いの内容の役務であると認識するに止まり、需要者が何人かの業務に係る役務であるかを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨、認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3.当審の判断 |
本願商標は、上記の通り「湘南陶芸教室」の文字を書してなるところ、該構成文字は、同書、同大、等間隔で外観上も一体不可分に表現され、しかも、構成全体をもって称呼しても、よどみなく一連に称呼し得るものである。 加えて、該構成中前半の「湘南」の文字部分は、「相模湾沿岸地帯」の意味を有するものであるとしても、後半の「陶芸教室」の文字部分は、「陶芸を教える所」の意味を表し、「○○陶芸教室」の如く、この種分野において役務の主体の名称として使用されているものである。 そうとすれば、本願商標は、その構成文字全体をもって、一連一体の陶芸教室の名称を表してなるものとみるのが相当である。 また、当審において調査するも、本顧商標の「湘南陶芸教室」の文字自体が、本願指定役務を取り扱う業界において、取引上、その役務の内容等を表示するものとして普通に使用されている事実を発見することができなかった。 そうとすれば、本願商標をその指定役務に使用しても、自他役務の識別標識としての機能を果し得るものというべきであり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標ということはできない。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当でなく、その理由をもって本願を拒絶することはできない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |