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A. 「リュ」の称呼を生ずる商標「Ryu」は、「リュウ」の称呼を生ずる引用商標(別掲)とは、称呼上も互いに非類似と判断された事例
(不服2004-26020、平成18年3月24日審決、審決公報第77号)
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1.本願商標 |
本願商標は、「Ryu」の欧文字を標準文字で表してなり、第25類、第28類及び第41類に属する願書記載の通りの商品又は役務を指定商品及び指定役務として、平成15年8月29日に登録出願、その後、同16年5月24日付の手続補正書により、第41類の役務が削除され、最終的に、第25類「運動用特殊衣服、運動用特殊靴」及び第28類「運動用具」と補正されたものである。
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2.引用商標 |
原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第4745985号商標(以下、「引用商標」という。)は別掲に示す通りの構成よりなり、平成15年7月4日に登録出願、第28類「キャディバック、その他のゴルフ用具」を指定商品として、同16年2月6日に設定登録されたものである。
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3.当審の判断 |
本願商標は、上記の通り「Ryu」の欧文字を書してなるところ、その構成文字に相応して、「リュ」の称呼を生じ、また、特定の観念を有しない造語よりなるものと認められるものである。 他方、引用商標は、別掲に示す通り、図案化した龍の図形と黒色で塗りつぶした円の中に白抜きで書した「龍」の漢字及び装飾を施した欧文字の「DANCE」「WITH」「DRAGON」を縦方向に揃えて、三段に書してなるところ、該構成中「龍」の漢字及び「DANCE」「WITH」「DRAGON」の欧文字部分より、それぞれ「リュウ」及び「ダンスウィズドラゴン」の称呼を生ずるものである。 また、引用商標は、「龍」の漢字部分より「龍」の観念、「DANCE」「WITH」「DRAGON」の欧文字部分より、「龍と一緒に踊る」程の観念を生ずるものである。 そこで、本願商標より生ずる「リュ」の称呼と、引用商標より生ずる「リュウ」及び「ダンスウイズドラゴン」の称呼とを比較するに、まず、「リュ」と「ダンスウィズドラゴン」とは、その音構成、構成音数の相違から容易に聴別し得るものと認められる。 次に、「リュ」と「リュウ」の称呼についてみるに、両称呼は、語尾の「ウ」の音の有無に差異を有するものである。 しかして、差異音が「ウ」の音の有無であるとしても、本願商標「リュ」が特定の意味合いを有しない造語よりなるのに対して、引用商標中の「龍」の漢字部分よりは、「龍」の観念を有することは、極めてよく知られているばかりでなく、両称呼はいずれも拗音を伴う、2音と3音からなる短い音構成よりなることも併せて考慮すると、後者の「ウ」の音は、明瞭に聴取されるというべきであるから、本願商標より生ずる「リュ」の称呼と引用商標より生ずる「リュウ」の称呼とをそれぞれ一連に称呼しても互いに相紛れる虞がないものと判断するのが相当である。 また、本願商標と引用商標とは、外観において互いに区別し得る差異を有し、観念については、比較できないから、互いに相紛れる虞のないものである。 そうすると、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点より見ても、類似しない商標と解するのが相当である。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当ではなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって結論の通り審決する。 |
B. 商標「」は、構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字及び記号からなるものではない等として、公の秩序又は善良な風俗を害する虞はない、と判断された事例 (不服2004-19033、平成18年3月14日審決、審決公報第77号)
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1.本願商標 |
本願商標は上掲の通りの構成よりなり、第16類「印刷物」を指定商品として、平成16年1月6日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同16年7月7日付の手続補正書をもって、第16類「雑誌、新聞」に補正されたものである。
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2.原査定の拒絶の理由(要旨) |
本願商標はその指定商品との関係から、小説家として知られる「永井荷風」(1879-1959)の略称と認められる「荷風」の文字を含むところ、出願人が遺族の承諾を得たものとは認められず、このようなものを商標としてその指定商品に使用することは、穏当でない。 したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 |
3.当審の判断 |
本願商標は上掲の通り、「Kahoo!」の欧文字及び感嘆符と「荷風!カフー!」の漢字及び感嘆符を二段に横書きしてなるものであるところ、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字及び記号からなるものではなく、また、本願商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものではない。 さらに、本願商標を構成する各文字及び感嘆符が、他の法律によってその使用が禁止されているものと認めることはできない。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって結論の通り審決する。 |