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 商標「ひよこちゃん」(指定商品:即席中華そばのめん)は、ひよこの形をしたお菓子について周知著名な引用商標「ひよ子」とは類似するけれども、両者の商品の性質、用途、目的が異なり、一般の消費者により明瞭に区別されるから、当該商標を上記指定商品に使用しても、取引者・需要者たる一般消費者が、同商品を引用商標「ひよ子」の業務主体又は同社と何らかの関係にある者の業務に係るものと混同する虞はない、と判断された事例
(不服2001-7911、平成18年4月24日審決、審決公報第78号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「ひよこちゃん」の文字を標準文字により横書きにてなり、平成10年5月20日に登録出願され、その指定商品については、同11年7月21日付手続補正書をもって、第30類「即席中華そばのめん」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)
 本願商標は、商標登録第524914号の商標権者が使用する当該商標(以下、「引用商標」という。)と類似する商標であって、これを本願指定商品について使用するときは、当該商標権者の製造販売に係り、或いは同人と何等かの関係がある商品であるかのごとく商品の出所について混同を生じさせる虞があるから、商標法第4条1項15号に該当する旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「ひよこちゃん」の文字よりなるものであり、他方、引用商標は、「ひよ子」の文字よりなるものである。
 そこで、本願商標と引用商標との類否について検討するに、本願商標と引用商標とは、外観において相違するところがあるとしても、「ひよこ(雛)」の観念及び「ヒヨコ」の称呼を共通にするものであり、商標のみを比較した場合には、互いに類似する商標であると認められる。
 ただし、引用商標の「ひよ子」は、普通名詞の「ひよこ」の「こ」を「子」としただけであり、また、本願商標の「ひよこちゃん」も普通名詞の「ひよこ」に「ちゃん」を付しただけの商標であるから、いずれも普通名詞の「ひよこ」と類似するものであって、独創的な商標ということはできず、その商標としての自他商品識別力は本来的に弱いものである。
 次に、引用商標の周知・著名性及び独創性の程度について検討するに、引用商標は、本願出願当時である平成10年頃も、その後においても、主として土産物或いは贈答品に頻繁に利用される、ひよこの形をしたお菓子に付された商標として、首都圏及び九州を中心として、広く全国的に、取引者、需要者間に知られていたものと認められる。ただし、引用商標は、上記の通り、普通名詞の「ひよこ」と類似するものであり、独創的な商標ではなく、その商標としての自他商品識別力は弱いものであるから、その周知性は、主として土産物或いは贈答品に頻繁に利用されるひよこの形をしたお菓子という商品と密接に結合して形成されたものであり、いわば、当該商品を連想させる商標として、周知著名であったものであると認められる。
 さらに、本願商標の指定商品と引用商標の使用商品の関連性の程度、取引者、需要者の共通性並びに取引の実情について検討してみるに、引用商標が使用されている「ひよこの形をしたお菓子」と本願商標に係る「即席中華そばのめん」とは、一般の消費者を共通の需要者とするとしても、前者は主として、土産物・贈答品として、駅や空港の売店、百貨店やスーパーマーケットなどの大規模店舗の専門店、贈答品コーナー、或いは株式会社ひよ子の直営店等で対面販売されるものであるのに対し、後者は、主としてスーパーマーケットやコンビニなどの量販店で日常食料品として販売され、消費者が棚に陳列された商品を直接手にとってレジカウンターに運び購入するものであるから、同じ食品に属するものであるとしても、両者は、商品の性質、用途、目的が異なり、一般の消費者により明瞭に区別される商品であるということができる。
 以上によれば、本願商標をして商品の「即席中華そばのめん」に使用しても、その取引者及び需要者である一般消費者が、同商品を、引用商標「ひよ子」の業務主体又は同社と何等かの関係にある者の業務に係るものと混同する虞があるとみることはできないというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は取消しを免れない。
 その他、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '07/4/1