最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「」は、商品に付された装節的図柄としてではなく、一種の矢印状又は針状の図形商標として認識され、自他商品の識別機能を有する、と判断された事例
(不服2004-11626、平成18年6月28日審決、審決公報第80号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、第12類「船舶並びにその部品及び附属品」を指定商品として、平成15年3月20日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 これに対し、原査定は、「本願商標は4ケ所小さな切れ目を入れて横に一本直線を描いてなるものであるが、本願商標のような直線は一種の模様の如くに認識されるものであり、本願商標をその指定商品に使用しても『小さな切れ目を入れた直線』であって、単に商品に付された装飾的な図柄として理解、把握されるに過ぎず、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は上掲に示した通り、右を尖端として途中4ケ所、左部分と右部分の同間隔の位置において切れ目が入った矢印状又は針状の図柄を描いたと看取される構成よりなるものであり、全体として一種の矢印状又は針状の図形商標と認識されるというのが相当である。
 そうとすれば、原審説示のように本願商標が単に商品に付された装飾的図柄として理解し、把握されるものと直ちに認めることができない。
 してみると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を有するものであって、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「マリーナミリターレ/MARINA MILITARE」は、イタりア語の「海軍」を指称する既成語であって、出願時に商品「時計」を取り扱う業界において日本国内又は外国において周知と認め得る証拠は見出せず、さらに不正の目的で使用する商標であると推認し得る証左もないから、商標法第4条第1項第19号に該当しない、と判断された事例
(不服2004-5620、平成18年6月30日審決、審決公報第80号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「マリーナミリターレ」と「MARINA MILITARE」の文字を上下二段に横書きしてなり、第14類「時計」を指定商品として、平成13年8月13日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、『1860年にフィレンツェで創業されたグイド・パネライ&フィリオ』社がイタリア等において商品『時計』に使用して著名な商標と認められる『MARINA MILITARE』の文字とそのイタリア語による読み方を片仮名表記したものと認められる『マリーナミリターレ』と書してなるから、本願商標は他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的を持って使用するものと認められる。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
(1)  本願商標は、前記の通り「マリーナミリターレ」と「MARINA MILITARE」の文字からなるものであるところ、「MARINA MILITARE」の文字は、イタリア語の「海軍」を指称する語であることが請求人提出の証拠によって認められる。また、当該片仮名文字は欧文字の表音とみて自然なものである。
(2)  「マリーナミリターレ」又は「MARINA MILITARE」の文字が、時計を取り扱う業界にあって本願商標の出願時に日本国内又は外国において既に周知な商標となっていたと認め得る的確な証拠は見出せない。そのうえ、上記の通り本願商標を構成する文字は、既成語の一つというべきものである。
 さらに、本願商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的、その他の不正の目的で使用する商標であると推認し得る何等の証左もない。
 してみれば、本願商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえない。
(3)  以上の通り、本願商標が前記条項に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '07/4/17