最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「スーパードライ/SUPER DRY」は、アサヒビール株式会社が商品「ビール」に使用して、取引者・需要者の間に広く認識されているものであるとしても、本願の指定商品「紙類」と商品「ビール」とは、その品質、原材料はもとより、流通経路においても関連性が認められないから、商品の出所について混同を生ずる虞はない、と判断された事例
(不服2005-24055、平成18年7月26日審決、審決公報第81号)
 
第1 本願商標
 本願商標は「スーパードライ」及び「SUPER DRY」の文字を二段書きしてなり、第16類に属する願書記載の通りの商品を指定商品として、平成17年1月20日に登録出願されたものである。
 そして、指定商品については、当審における平成17年12月14日付の手続補正書により、第16類「紙類」に補正されたものである。


第2 原査定における拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、『SUPER DRY』及びその表音に相当する『スーパードライ』の各文字を二段に表した構成からなるところ、『スーパードライ』及び『SUPER DRY』の各文字は、『アサヒビール株式会社』が自己の業務に係る商品『ビール』に使用し、本願商標の登録出願時には取引者・需要者の間において広く認識されているものと認められる。そうすると、近時における企業経営の多角化の傾向にあることをも併せ勘案すれば、本願商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は上記者の商標を想起し、該商品が『アサヒビール株式会社』又は同者等と組織的若しくは経済的に何等かの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせる虞があるものといわざるを得ない。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
 本願商標は上記1の通り「スーパードライ」及び「SUPER DRY」の文字よりなるところ、「スーパー」、「ドライ」、「SUPER」及び「DRY」の各文字は、平易な英語及びその表音と認められ、全体としても同様といえるものである。
 そして、たとえ、原審説示のように「スーパードライ」及び「SUPER DRY」の文字は、アサヒビール株式会社が商品「ビール」に使用して、取引者・需要者の間において広く認識されているものであるとしても、本願の指定商品「紙類」と商品「ビール」とは、その品質、原材料はもとより流通経路においても関連性が認められないから、本願商標に接する取引者・需要者は、本願商標が平易な英語及びその表音であることも相侯って、アサヒビール株式会社の業務に係る商品であることのみを想起し、連想するということはできない。
 そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、当該商品がアサヒビール株式会社又は同社と何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認するとはいい難く、商品の出所について混同を生ずる虞はないというのが相当である。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「ANOTHER HEAVEN/アナザーヘブン」は、直ちに映画の題名「アナザーヘブン」を認識させるものとはいえず、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではない等として商標法第4条第1項第7号に該当しない、と判断された事例
(不服2004-25853、平成18年8月4日審決、審決公報第81号)
 
1 本願商標
 本願商標は「ANOTHER HEAVEN」及び「アナザーヘブン」の文字を二段に書してなり、第18類及び第25類に属する願書記載の通りの商品を指定商品として、平成16年4月8日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要旨
 原査定は、「本願商標は、主演/江口洋介 監督/飯田譲治の映画の題名『アナザーヘブン』の文字を書してなるから、これを前記製作者と関係のない他社が商標として採択使用することは、社会の一般的道徳観念に反し、公の秩序を害する虞がある商標といわざるを得ない。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、前記1の通りの構成よりなるところ、これよりは、直ちに原審説示の映画の題名を認識させるものとはいえないばかりか、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではなく、また、本願の指定商品について本願商標を採択・使用することが、直ちに社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するようなものでもなく、さらに、他の法律によってその使用等が禁止されているものとは認められない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当ではなく取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本融について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '07/5/25