最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「  」は、最近の文字のデザイン化傾向により「if」の文字を書してなると無理なく理解されるため、「イフ」とのみ称呼され、「アイエフ」と称呼され得ないから、引用商標「アイエフ」とは称呼上非類似と判断された事例
(不服2004-15086、平成18年8月25日審決、審決公報第82号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、第9類に属する願書記載の通りの商品を指定商品として、平成10年4月7日に登録出願されたものである。

2.引用商標
 原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第4263769号商標(以下、「引用商標」という。)は、「アイエフ」の文字を書してなり、第9類に属する商標登録原簿に記載の通りの商品を指定商品として平成9年10月7日登録出願、同11年4月16日に設定登録されたものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなるところ、最近の文字のデザイン化傾向により「if」の文字を書してなると無理なく理解されるものである。してみれば、本願商標からは、英語の「if」の読みに相応して「イフ」の称呼を生ずるとみるのが自然である。
 一方、引用商標は、前記の通りの構成文字に相応して「アイエフ」の称呼を生ずること明らかである。
 してみると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を有するものであって、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえない。
 したがって、本願商標より「アイエフ」の称呼が生ずるとし、その上で、両商標が称呼上類似するものとして、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「数検/数学検定」は、指定役務について役務の質・内容を表示したに過きないものではなく、いずれの指定役務に使用しても役務の質の誤認を生じさせる虞もないし、財団法人日本数学検定協会の理事長の地位にあって、かつ、本原商標の商標権の取得を認められている請求人が、登録商榎として確保することが穏当ではないとは、いい得ない、と判断された事例
(不服2004-23832、平成18年8月29日審決、審決公報第82号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「数検」及び「数学検定」の漢字を上下二段に横書きしてなり、願書記載の役務を指定役務として、平成16年1月16日に登録出願、その後、指定役務については原審における同16年9月27日付け手続補正書をもって、第41類「数学に関する資格認定試験の実施、算数・数学検定に関する電子書籍の提供」に補正されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定の拒絶の理由は、以下の通りである。
(1) 本願商標は「数検」「数学検定」の文字を二段に書してなるところ、該文字からは、「数学についての試験を行い、一定の基準に照らして検査し、合格・不合格・価値・資格の検定」の意味合いを容易に理解、認識させるものであるから、これを本願指定役務中、前記に照応する役務に使用するときは、単にその役務の質(内容)を表示したものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせる虞があるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(2) 本願商標は、公的な機関が主催する数学に関する検定試験の一つであるかのように認識、理解される「数検」「数学検定」の文字を二段に書してなるところ、これを一個人である出願人が自己の商標として採択使用することは、検定試験に対する社会的信頼を失わせる虞があり、穏当ではない。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。


3.当審の判断
 本願商標は、前記1に示した通り、「数検」及び「数学検定」の漢字よりなるものであるところ、「数学検定」は、文部科学省認定法人である財団法人日本数学検定協会が、数学の学習機会を広く提供し、生涯学習社会の構築の一つに学習数学を位置づけ、その指標となることを目的として、遅くとも、平成7年(甲第10号証)より、年数回にわたり、毎年実施されている検定試験(正式名称は「実用数学検定試験」)であって、請求人(出願人)は、その理事長(平成18年7月12日提出の上申書)の地位にあり、その理事会の決議(同18年7月1日)により、請求人が本願商標の商標権の取得を認められていることが、同上申書に添付された「平成18年臨時理事会議事録」よって、明らかである。
 ところで、本願商標は、前記1に示した補正後の指定役務「数学に関する資格認定試験の実施、算数・数学検定に関する電子書籍の提供」についてみれば、その構成中の「数検」の文字が単に役務の質(内容)を表示したに過ぎないものということはできないし、また、その指定役務中のいずれの役務に使用しても役務の質の誤認を生じさせる虞があるものということもできないものである。
 また、これを出願人が登録商標として確保することが穏当ではないとは、いい得ないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号又は同第7号のいずれにも該当するものでもないから、これを理由として本願を拒絶した原査定は、取り消すべきである。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '07/6/12