最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「TSUDA」は、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する域を出ない商標ではあるが、商標法第3条第2項の要件を溝たすものとして登録するべきものとする、と判断された事例
(不服2004-16464、平成18年9月25日審決、審決公報第83号)
|
1.本願商標 |
本願商標は、「TSUDA」の欧文字を標準文字で書してなり、第9類の「電線及びケーブル」を指定商品として、平成15年7月7日に登録出願されたものである。
|
2.原査定の拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標は、ありふれた氏と認められる『津田』に通ずる『TSUDA』の欧文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと認める。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第4号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
|
3.当審の判断 |
本願商標は、前記の通り「TSUDA」の文字を書してなるものであるところ、該文字は「津田」をローマ字で表したものであり、その態様も強く印象されるような特異なものではなく、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する域を出ない商標といわざるを得ない。 したがって、この限りにおいて原査定の判断は妥当なものである。 しかしながら、請求人は本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備していると主張し、証拠方法として甲第1号証乃至甲第131号証を提出している。 そこで判断すると、通商産業省の承認書及び甲種電気用品に係る略称表示承認申請書、カタログ等(甲第1号証乃至同第7号証)、商品の売上伝票及び注文書並びに平成15年度年間売上(甲第31号証乃至同第41号証及び同第128号証)、社団法人京都工業会及び社団法人日本電線工業会大阪支部等の証明書(甲第42号証乃至甲第119号証)及び指定商品である「電線及びケーブル」の取り扱い者が限られていること等を総合勘案すれば、請求人により本願商標と同一の態様からなる商標が指定商品について使用された結果、本願商標は現在では、取引者・需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものというのが相当である。 したがって、本願商標は商標法第3条第2項の要件を満たすものとして、これを登録すべきものとする。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「」は、一部の図形部分(人物全体の図形のうち被り物の図形)のみを抽出するのではなく、構成全体を不可分一体のものとして認識すべきものであるから、ノルウェー王国政府が商品「電気製品」に使用する監督用の印章又は記号であって、経済産業大臣が指定するもの「」と同一又は類似するものではない、と判断された事例 (不服2006-2668、平成18年10月23日審決、審決公報第84号)
|
1.本願商標 |
本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、第9類、第16類、第18類、第24類、第25類、第28類、第38類及び第41類について願書記載の通りの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成17年5月11日に登録出願されたものである。 そして、指定商品及び指定役務については、原審における平成17年10月28日付の手続補正書及び当審における平成18年2月13日付の手続補正書により、補正されたものである(詳細は省略)。 |
2.原査定における拒絶の理由及び引用標章 |
原査定は、「本願商標は、ノルウェー王国政府が商品『電気製品』に使用する監督用の印章又は記号であって、経済産業大臣が指定するもの(平成9年2月3日号外、経済産業省告示第40号)(以下、「引用標章」という。)と同一又は類似であり、かつ、前記商品と同一又は類似の商品(役務)に使用するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。そして、引用標章は、上掲の通りの構成よりなるものである。
|
3.当審の判断 |
本願商標は、上掲の通り、被り物をしたと思しき人物の図よりなるところ、該被り物に表示された図形部分(以下、単に「図形部分」という。)は、「円」と「N」の文字とを組み合わせた如きものであって、特徴あるとはいえないものであるから、かかる構成にあっては、殊更図形部分のみに着目して取引に当たるとみるよりも、構成全体を不可分一体のものと認識し、取引にあたると見るのが相当である。 そうすると、原審のように本願商標から図形部分を抽出し、それと引用標章とを比較するのは適当でないといわなければならない。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第5号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |