最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「CONVERSE/コンバース」(第36類の役務を指定)は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州に所在する「Converse,Inc.」が商品「運動靴」に使用して著名な商標「CONVERSE」と同一又は類似するとしても、本願商標の指定役務と「Converse,Inc.」の業務に係る「運動靴」等とは、その層する業種業態か異なり、関違性が薄いものであって、かつ、商品と役務の用途、商品の販売場所と役務の提供場所等を著しく異にするものであるから、その役務の出所について混同を生じる虜はない、と判断された事例
(不服2006-15186、平成18年12月14日審決、審決公報第86号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「CONVERSE」の欧文字と「コンバース」の片仮名文字を上下二段に書してなり、第36類に属する願書記載の通りの役務を指定役務として、平成17年2月18日に登録出願されたものである(その後、指定役務については当審における同18年7月13日付の手続補正書により、補正されている。)。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州に所在する『Converse,Inc.』が商品『運動靴』に使用して著名な商標『CONVERSE』と同一又は類似の文字よりなるものであるから、これを出願人が本願指定役務に使用するときは、恰もこれが前記会社の業務に係り、或いは何等かの関係があるかの如く役務の出所について誤認を生じさせる虞があるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断して本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は前記の通り、「CONVERSE」と「コンバース」の文字を二段に書してなるところ、これが、「Converse,Inc.」が商品「運動靴」に使用し、取引者、需要者に知られている「CONVERSE」と同一又は類似するものであるとしても、本願の指定役務と「Converse,Inc.」の業務に係る「運動靴」等とは、その属する業種業態(分野)が異なり、関連性が薄いものであって、かつ、商品と役務の用途、商品の販売場所と役務の提供場所等を著しく異にするものというのが相当である。
 そうすると、本願商標をその指定役務に使用しても、当該役務が「Converse,Inc.」又は同人と何等かの関係のある者の業務に係る役務であるかの如く、その役務の出所について混同を生じる虞があるものということはできない。
 したがって、本願商標を商標法第4条第1項第15号に該当するとして、本願を拒絶した原審の査定は妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「夢二」は、引用商標「夢路」との比較において称呼「ユメジ」を同一にするとしても、外観、称呼及び観念を総合して全体的に観察した場合に、商品の出所の誤認混同を生ずる虞があるとはいい難く、互いに類似しないと判断された事例
(不服2005-21743、平成18年12月20日審決、審決公諏第86号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「夢二」の文字を横書きしてなり、第30類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成17年1月31日に登録出願されたものである。そして、同年8月24日にその指定商品は、第30類「和菓子」に補正されている。

2 引用商標
 原査定において、本願商標の拒絶の理由に引用した登録第1673657号商標(以下、「引用商標」という。)は、「夢路」の文字を横書きしてなり、昭和53年6月22日に登録出願され、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同59年3月22日に設定登録されたものである。そして、当該商標権は存続期間の更新登録がされるとともに、平成16年7月21日に第30類「菓子及びパン」とする指定商品の書換登録がされている。

3 当審の判断
 本願商標と引用商標とは、ともに簡易な漢字2文字から構成され、語頭の「夢」の文字を共通にするとしても、語末の「二」と「路」の文字において顕著に相違するものであって、「夢二」の文字を書してなる本願商標よりは、詩人・画家であった「竹久夢二」を連想・想起し、当該人物が観念されるとみて差し支えなく、その呼び名である「ユメジ」の称呼を生ずるというのが自然である。他方、「夢路」の文字を書してなる引用商標よりは「ユメジ」と読まれ、その意味として「夢がつぎつぎに展開されるのを、道を行くのにたとえたもの。夢に見ること。」等の熟語を認識でき、その観念及び称呼を生ずるということができる。
 してみると、両商標は、上記の通り、外観及び観念において著しく相違するものであり、その外観・称呼及び観念を総合して全体的に観察すると、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等が異なるものであって、両者はその称呼を同一にするとしても、これをもって直ちに商品の出所の誤認混同を生ずる虞があるといい難い商標といわなければならない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願を拒絶することはできない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '07/11/04