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商標「Buddha/仏陀」は、これをその指定商品に使用するときには、「仏陀」の尊厳を損ない、仏教信者の信仰上の感情を害し、社会公共の利益・社会の一般的道徳観念に反するから、公の秩序又は善良な風俗を害する虞がある、と判断された事例
(不服2004-24437、平成18年11月27審決、審決公報第87号)
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1.本願商標 |
本願商標は、「Buddha」「仏陀」の文字を上下二段に普通に用いられる方法で書してなり、第18類「かばん金具、がま口口金、皮革製包装用容器、愛玩動物用被服類、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、傘、ステッキ、つえ、つえ金具、つえの柄、乗馬用具、皮革」を指定商品として、平成16年2月6日に登録出願されたものである。
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2.原査定の拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標は、インドの宗教の先覚者で仏教の開祖である『Buddha』『仏陀』の文字を二段に書してなるものであるから、このようなものを一企業である出願人が商標として採択使用することは穏当ではない。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願商標を拒絶したものである。
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3.当審の判断 |
本願商標は、上記の通り「Buddha」「仏陀」の文字を上下二段に、普通に用いられる方法で書してなるところ、これは、株式会社岩波書店 広辞苑第五版によれば、「(梵語buddhaの音写。覚者・智者と訳す)目覚めた人の意で、悟りに達した人をいう。特に釈迦牟尼を指すが、広義には過去・未来及び十方世界に多くの仏陀が存在するという。仏ぶつ。ほとけ。ブッダ。」を意味し、インドのサンスクリット語では「目覚めた人」「体解した人」「悟った者」などの意味を有し、一般的に日本では仏教の開祖、釈迦を「仏陀」とみており、或いは釈迦の尊称として「仏陀」の語が用いられている。 ところで、キリスト教、イスラム教と並び世界三大宗教の一つといわれる仏教の信者は世界的にも多数存在するところ、上記のように、「Buddha」「仏陀」は我国では仏教の開祖、釈迦ともみられるものであって、仏教信者にとってはかけがえのない信仰のよりどころとなるものでもあるから、該文字よりなる本願商標を、その指定商品に使用するときには、「仏陀」の尊厳を損ない、信者の信仰上の感情を害し、ひいては、公の秩序又は善良な風俗を害する虞があるものというべきである。 そして、商標法第4条第1項第7号において「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」とは、商標の構成自体が矯激、卑猥なものではなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合も含まれると解されるものである。 そうとすれば、本願商標を商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、これを取り消すことはできない。 尚、請求人(出願人)は過去の登録例を挙げて、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当しない旨述べているが、請求人(出願人)の挙げる登録商標と本願商標とは構成及び態様が異なり、事案を異にするといわざるを得ないものであり、そして、具体的事案の判断においては、過去の登録例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきであるから、この点の請求人の主張は採用することができない。 また、登録出願に係る商標が公序良俗を害する虞があるか否かについては、査定時又は審決時における社会通念に基づき認定、判断すべきところ、社会通念は時代と共に変化するものでもあるから、それに伴って、従来公序良俗を害する虞がなかったものがあるようになったり、また、その逆もあり得ることであり、過去に登録されたものが常に公序良俗を害する虞がないとは言い得ないというべきである。 さらに、商標権は、商標権者が指定商品又は指定役務について登録商標を専有し、同者が所謂排他的独占権を有するものであるところ、近時、知的財産に対する認識、評価、さらには、権利意識が高まり、権利行使が日常的に行われていることは、当庁において顕著な事実であり、商標権においても例外ではないことから、国内における商標権についていたずらな紛争を回避する目的においても、仏教の開祖として知られる本願商標については、前記の通り判断するのが相当である。 よって結論の通り審決する。 |