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A. 商標「  」は、全体として創造的に図案化された文字よりなり、単に商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示したものではなく、かつ、補正後の商品の品質について誤認を生じさせる虞はない、と判断された事例
(不服2006-13490、平成19年7月27日審決、審決公報第93号)
 
1.本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、第32類及び第33類に属する願書に記載した商品を指定商品として、平成17年7月1日に登録出願されたものであるが、その後、指定商品については、最終的に第32類「立山連峰の湧水を用いた鉱泉水、その他の立山連峰の湧水を用いた清涼飲料、果実飲料、乳清飲料」及び第33類「中国酒、薬味酒」に補正されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、『立山』の文字を未だ特殊とも認められない方法で表示してなるところ、株式会社岩波書店が発行した『広辞苑』第五版によれば、この文字は『富山県の南東部、北アルプスの北西端に連なる連峰』を表したものと認められ、多くの登山客、観先客が訪れ、本願指定商品中には、土産物として販売されやすい商品も存在するものと認められるから、これを指定商品中、『前記文字に照応する商品(例えば、果実酒、鉱泉水)』について使用するときは商品の産地、賑売地を表示したものと理解されるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たさないものといえる。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、前記文字に照応する商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせる虞があるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨の認定、判断をし、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上掲に示した通り、「立」及び「山」の漢字を基と理解するも、特殊な字形に変形、誇張する表現手法をもって表してなり、極めて創造的形象の印象を受けるものである。
 そうすると、原審が説示するような、普通に用いるような方法の域を脱しない態様で表示したものとは言い難く、むしろ、全体として創造的に図案化された文字よりなるものとみるのが相当である。
 してみると、本願商標は視覚上特異な商標として看取させ、それをもって取引の指標とするものといえるものであるから、自他商品の識別標識としての機能を果し得るものというべきである。
 また、北アルプスの北西端の立山連峰下の室堂高原は、立山・黒部アルペンルート内に位置し、多くの観光客が訪れるとともに、日本名水百選に選ばれた立山玉殿湧水が湧き出す水の名所にもなっているところ、本願商標の指定商品については、上記1の通りの補正がなされたものである。
 そうとすれば、本願商標は単に商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示したものとはいえないものであり、かつ、補正後の指定商品に使用しても商品の品質について誤認を生じさせる虞はないといわざるを得ない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶をすべき理由を発見しない。
 よって結論の通り審決する。


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B. 商標(別掲)は、図形部分から「ベリー」の称呼が生じないから、引用商標(別掲)とは称呼上非類似と判断された事例
(不服2006-19030、平成19年8月7日審決、審決公報第93号)
 
1.本願商標
 本願商標は上掲の通りの構成よりなり、第44類に属する願書記載の通りの役務を指定役務とし、平成17年10月6日に登録出願されたものである。

2.引用商標
 原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第4845240号商標(以下、「引用商標」という。)は上掲の通りの構成よりなり、平成16年3月3日に登録出願、第44類に属する商標登録原簿記載の通りの役務を指定役務として、平成17年3月11日に設定登録されたものである。

3.当審の判断
 本願商標は、上掲の通り、上段に欧文字の「V」の文字をモチーフにした印象を与える図形とその図形の2分の1程度の大きさのやや図案化された「E」と「RY」の文字を横書きにし、その下段に「AESTHETIC&PLASTIC SURGERY」の文字を横書きにした構成よりなるものである。
 そして、図形部分は「V」の文字をモチーフにしていることは否定できないとしても、両先端部分を鋭角にして、右上斜め方向にたなびくようにして表してなり、かつ、「V」の文字の左側の線は二重線をもって表してなり、該構成からは、文字として認識されるとみるよりは、むしろ、特徴のある図形として理解、認識されるものというべきであり、該図形より直ちに特定の称呼を生ずることはないとみるのが相当である。
 そうすると、本願商標は上記の通り図形と文字との構成よりなり、上段の該図形から特定の称呼が生ずるものとは認識し得ないことから、本願商標から「べリー」の称呼を生ずるものとし、その上で、本願商標と引用商標とが称呼上類似するものとして、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '08/4/25