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 商標「Burglar」は、刑法第236条第1項に規定する犯罪「強盗」等を意味する英単語であって、該意味が容易に看取されるものであるから、これを指定商品「被服」等に商標として使用することは、これに接する取引者・需要者に不快な印象を与え、社会の一般的道徳観念に反し、構成自体公の秩序又は善良の風俗を害する虞のある商標に該当する、と判断された事例
(不服2006-27572、平成19年7月4日審決、審決公報第94号)
 
1.本願商標
 本願商標は、「Burglar」の欧文字を標準文字で書してなり、第14類「身飾品、イアリング、ピアス、ネックレス、ブレスレット、ペンダント、ブローチ、ロケット、指輪、貴金属製き章、貴金属製バックル、貴金属製バッジ、貴金属製ボンネットピン」及び第25類「被服、イブニングドレス、ジャケット、デニムパンツ、ジョギングパンツ、スウェットパンツ、スーツ、スカート、ズボン、オーバーコート、トッパーコート、マント、レインコート、カーディガン、セーター、チョッキ、開きんシャツ、スポーツシャツ、ブラウス、ポロシャツ、ワイシャツ、えり巻き、靴下、ストール、ショール、スカーフ、手袋、ネクタイ、ネッカチーフ、バンダナ、マフラー、耳覆い、帽子」を指定商品として、平成18年3月13日に登録出願されたものである。

2.原査定の拒絶の理由の要旨
 原査定は、「本願商標は、『Burglar』の文字からなるものであるところ、該語は『ブルガリア人に対する蔑称』であり、現在でも使用されており、『同性愛者の男役』を意味する侮辱語でもあるものであって、さらに『強盗』の意味を有する語でもある。したがって、本願商標は国際信義に違反し、公の秩序を乱すものであり、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3.当審の判断
 商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害する虞のある商標」には、商標の構成自体が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合が含まれ、さらに、他の法律によって、その使用等が禁止されている商標も含むと解されているものである。
 そして、本願商標は前記した通り「Burglar」の文字を書してなるところ、該文字は「夜盗、強盗」等を意味する英単語であって、我が国においては高校程度で学習する語であることからすれば、(「ユニオン英和辞典第2版」(研究社)、「英和中辞典」(旺文社))、本願商標に接する取引者・需要者は、「強盗」等の意味を容易に看取するとみるのが相当である。
 しかして、「強盗」は、刑法第236条第1項に規定する犯罪である。
 そうとすると、「強盗」を容易に看取する「Burglar」の文字からなる本願商標を、その指定商品の「被服」等の商品に商標として使用することは、これに接する取引者・需要者に不快な印象を与え、社会の一般的道徳観念に反するから、本願商標はその構成自体公の秩序又は善良な風俗を害する虞のある商標といわなければならない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
 なお、請求人(出願人)は過去の登録例を挙げて、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当しない旨述べているが、登録出願に係る商標が公序良俗を害する虞があるか否かについては、査定時又は審決時における社会通念に基づき認定、判断すべきものである。
 そして、社会通念は、時代と共に変化するものでもあるから、それに伴って、従来公序良俗を害する虞がなかったものがあるようになったり、またその逆もあり得ることであり、過去に登録されたものが常に公序良俗を害する虞がないとは言い得ないものであるから、それらをもって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かの基準とするのは、必ずしも適切でなく、請求人のその主張は採用できない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '08/4/25