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 役務表示「○○の小売り」を「○○の売買契約の媒介」とする補正は、指定役務の範囲を変更するものとはいえない、と判断された事例
(補正2006-50014、平成19年9月13日審決、審決公報第95号)
 
1.本願商標
 本願商標は、願書記載の通りの構成よりなり、第35類「インターネットウェブサイトを介して行うPHS端末装置の小売り、インターネットウェブサイトを介して行う携帯無線通信端末装置の小売り、インターネットウェブサイトを介して行う電話機の小売り、インターネットウェブサイトを介して行う電話周辺機器の小売り、インターネットウェブサイトを介して行う携帯無線データ通信端末装置の小売り、インターネットウェブサイトを介して行うPDAの小売り、インターネットウェブサイトを介して行うコンピュータの小売り、インターネットウェブサイトを介して行うコンピュータ周辺機器の小売り、インターネットウェブサイトを介して行うコンピュータプログラムの小売り、インターネットウェブサイトを介して行う商品の小売り、商品の販売に関する情報の提供」を指定役務として、平成17年11月25日に登録出願、その後、指定役務については、同18年6月21日付の手続補正書により、「インターネットウェブサイトを介して行うPHS端末装置の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行う携帯無線通信端末装置の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行う電話機の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行う電話周辺機器の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行う携帯無線データ通信端末装置の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行うPDAの売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行うコンピュータの売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行うコンピュータ周辺機器の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行うコンピュータプログラムの売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行う商品の売買契約の媒介、商品の販売に関する情報の提供」に補正されたものである。

2.補正の却下の決定の理由の要旨
 原審において、平成18年6月21日付で提出された手続補正書により補正された指定役務中『インターネットウェブサイトを介して行うPHS端末装置の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行う携帯無線通信端末装置の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行う電話機の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行う電話周辺機器の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行う携帯無線データ通信端末装置の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行うPDAの売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行うコンピュータの売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行うコンピュータ周辺機器の売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行うコンピュータプログラムの売買契約の媒介、インターネットウェブサイトを介して行う商品の売買契約の媒介』は、出願当初の商品及び役務の区分並びにその区分に属する役務を指定したものではないので、商品及び役務の区分並びに指定役務の範囲を変更するものである。したがって、この補正は、本願について、その要旨を変更するものと認める」旨の理由によって、本件補正を商標法第16条の2第1項の規定に基づき、平成18年7月10日付けの決定をもって却下したものである。

3.当審の判断
 本願に係る指定役務の区分は、前記1の通り、第35類である。
 そして、商品・サービスの国際分類表における第35類の注釈には、「この類には、特に、次のサービスを含む。/他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること。」と記載されていることより、上記便宜を図るための役務については、第35類に属する役務というべきである。
 また、願書に記載の表示からみて役務の内容・範囲が不明確であるといい得るものであって、審判請求書における請求人の説明及び前記国際分類よりすれば、小売業者が商品の所有権を購入者に移転することを約し、これに対して購人者が対価を払うという売買契約の成立を前提としている小売りは、小売業者がメーカーと最終消費者の間の売買契約を媒介しているに等しい役務であり、前記便宜を図る役務であるといい得るものである。
 してみれば、「○○の小売り」の表示を「OOの売買契約の媒介」とする補正は、指定役務の範囲を変更するものとはいえない。
 したがって、本願について、平成18年6月21日付手続補正書による役務の補正が指定役務の要旨を変更するものであるとして商標法第16条の2第1項の規定により却下した原決定は、妥当なものでなく取り消しを免れない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '08/11/19