最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「14bis/キャトルズビス」は、構成中の「bis」の文字部分のみが独立して分離・抽出されて国際機関としての国際決済銀行(Bank for International Settlements)の略称と認識されることはないから、商標法第4条第1項第3号に該当しない、と判断された事例
(不服2007-4271、平成20年1月30日審決、審決公報第99号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「14bis」及び「キャトルズビス」の文字を二段に横書きしてなり、第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品として、平成18年6月8日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、国際機関である『国際決済銀行』を表示する標章『BIS』の欧文字と同緩の『bis』の文字を構成中に書してなるものであるところ、該文字は、商標法第4条第1項第3号の規定に基づき、経済産業大臣が『国際決済銀行の標章指定』として指定する標章の一、すなわち、通貨安定のための国際協力機関である国際決済銀行(Bank for International Settlements)の略称を表示する標章(「BIS」)とその文字綴りを同じくするものである。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 商標法第4条第1項第3号は、「国際連合その他の国際機関を表示する標章であって、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標は、商標登録を受けることができない。」とするものであって、工業所有権の保護に関する国際間の条約であるパリ条約第6条の3(1)(b)の規定の趣旨を受けて設けられたものである。しかして、同条約の規定の目的とするところは、同盟国が加盟している政府間国際機関の紋章、旗章その他の記章、略称及び名称については、これを工業所有権の保護対象から除外することにより、当該機関の主権を尊重し、その権利と尊厳を維持・確保することにあり、前記法条の規定はこれと同趣旨をもって、一私人に独占させることにより当該国際機関等の尊厳性を害し、公益上支障のあるような標章を商標として登録しない旨を定めたものと解される。
 そこで、これを本件についてみるに、本願商標は、上記1の通り「14bis」及び「キャトルズビス]の文字よりなるところ、構成各文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔でまとまりよく一体的に表わされているものであり、指定商品中の被服等において仏語の文字がしばしば用いられることに照らせば、「キャトルズビス」の文字は、上段の「14bis」の読みを特定したものと理解させるところ、該文字より生ずる「キャトルズビス」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであり、他に構成中の「bis」の文宇部分のみが独立して認識されるものとは言い難いものであって、むしろ、「14bis」は、その構成全体をもって一体のものとして認識・把握されるとみるのが自然である。
 そうとすれば、本願商標を構成する文字中「bis」の文字部分を分離・抽出し、その上で国際決済銀行の標章と同一又は類似の商標であるとして、本願商標を商標法第4項第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標(上掲)は、取引者・需要者が、構成中の「+」の部分を独立した識別標識として認識するというよりも、構成全体として特定の意味合いを有しない一体不可分の造語を表したものと認識するものであるから、これより「赤十字の標章」を連想、想起するということはできず、商標法第4条第1項第4号に該当しない、と判断された事例
(不服2007-25405、平成20年2月5日審決、審決公報第99号)
 
1 本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成よりなり(但し、赤色の「+」について着色を省略した。)、第24類及び第25類に属する願書に記載の商品を指定商品として、平成18年2月14日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本顛商標は、白地に赤十字の標章と同一又は類似のものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第4号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、上掲の通り、「FREEZEDRY」の欧文字と、それに続けて赤色で「+」の記号を横一連に表し、その欧文字と記号の下に、「フリーズドライプラス」の片仮名文字を、灰色に左方からぼかして彩色した細長い矩形の右側に白抜きで表し、これらを組み合わせてなるものである。
 そして、「FREEZEDRY」の欧文字と「+」の記号については、縦画を太く、横画を細く、さらに、やや右方向に傾斜させるなど、統一したデザインでまとまりよく表わしているものである。
 さらに下段の「フリーズドライプラス」の片仮名文字は、上段の「FREEZEDRY+」の全体の読みを特定しているものと認められ、これもの文字及び記号より生ずると認められる「フリーズドライプラス」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。
 また、他に本願商標中の、上段右側の「+」のみを分離して観察しなければならない特段の理由も見出し得ない。
 そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、構成中の「+」の部分のみに着目し、これを独立した識別標識として認識するというよりも、むしろ、構成全体として特定の意昧合いを有さない一体不可分の造語を表したものと認識し、把握するとみるのが自然である。
 してみれば、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、構成中の「+」に着目し、これより「赤十字の標章」を連想、想起するということはできない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第4号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものではなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '08/12/01