最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「イナバウアーフレーム」は、構成中の「イナバウアー」の文字が、2006年のトリノオリンピック、女子フィギュアスケート・シングル競技において金メダルを獲得した荒川静香選手の得意技として知られているとしても、その構成自体が矯激、卑猥、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるものではなく、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められず、本願商標をその指定商品について使用することが、商取引の秩序を乱し、公共の利益に反するものとは言い難いから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれはない、と判断された事例
(不服2007-17501、平成20年2月8日審決、審決公報第99号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「イナバウアーフレーム]の文字を標準文字で表してなり、第9類「眼鏡」を指定商品として、平成18年5月11日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『イナバウアーフレーム』の片仮名文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の『イナバウアー』の文字は、2006年トリノ五輪フィギュアスケートの金メダリスト『荒川静香』選手の得意技の名称として広く一般に注目を浴びている言葉です。そうとすれば、衆目を集める言葉『イナバウアー』の文字を含む本願商標を一私人の商標として登録し、指定商品についての独占的使用を認めることは、公正な取引秩序を乱すおそれがあり穏当ではありません。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、前記1の通り「イナバウアーフレーム」の文字よりなるところ、その構成中の「イナバウアー」の文字が、2006年のトリノオリンピック、女子フィギュアスケート・シングル競技において金メダルを獲得した荒川静香選手の得意技として知られているとしても、本願商標をその指定商品について使用することが、商取引の秩序を乱し、公共の利益に反するものとは言い難く、また、本願商標は、その構成自体が矯激、卑猥、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるものではなく、さらに、他の法律によって、その使用が禁止されているものとも認められない。
 そうすると、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきではない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取り消しを免れない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「ティーエー」は、ローマ文字「TA」の音を片仮名で表示したものとは認識されず、特段の意味を看取させない一種の造語として認識されるから、商標法第3条第1項第5号に該当しない、と判断された事例
(不服2007-13734、平成20年1月31日審決、審決公報第100号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「ティーエー」の片仮名文字を標準文字で書してなり、第5類「薬剤」を指定商品として、平成18年7月26日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、ローマ字2文字の『TA』を容易に想起させる『ティーエー』の片仮名文字を標準文字で表示してなるところ、薬剤を取り扱う業界において、ローマ字の2字は、商品の品番、等級等を表示する記号、符号として類型的に取引上普通に採択使用されているものであるから、これを片仮名表記したに過ぎない本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、前記1の通り、「ティーエー」の片仮名文字を標準文字で書してなるものであるから、その構成上、直ちに極めて簡単で、かつ、ありふれた商標であるということはできない。そして、職権調査によれば、本願の指定商品を取り扱う業界において、ローマ字をもって、商品の規格、品番等を表示するための記号、符号として取引上普通に使用されている実情があるとまでは認められなかった。
 そうすると、本願商標は、ローマ文字「TA」の音を片仮名で表示したものとは認識されず、特段の意味を看取させない一種の造語として認識されるというべきである。
 してみると、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とは言い難く、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たすものと認められる。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '09/01/04