最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「信州味噌/長野県味噌工業協同組合」は、構成中「味噌」の文字部分が商品「みそ」を表すものであるとしても、本願指定商品と商品「みそ」とは、形状はもとより、その原材料、製法、用途を異にするばかりではなく、その販売場所をも異にするものであるから、取引者、需要者は該商品が「みそ」であるかの如く、その商品の品質について誤認を生ずる虞はない、と判断された事例
(不服2006-19883、平成20年4月15日審決、審決公報第102号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「信州味噌」及び「長野県味噌工業協同組合」の文字を上下二段の構成よりなり、第29類「みそ風味を有する食用油脂、みそ風味を有する乳製品、みそを用いた肉製品、みそを用いた加工水産物、みそを用いた加工野菜、みそを用いた加工果実など」を指定商品として、平成15年3月24日に団体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、その構成中に指定商品との関係において品質を表示するものと認められる『味噌』の文字を有してなるから、これをその指定商品中『みそ』以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生ずる虞があるものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、前記1の通り、「信州味噌」及び「長野県味噌工業協同組合」の文字を上下二段の構成よりなるところ、その構成中「信州味噌」に指定商品との関係において品質を表示するものと認められる「味噌」の文字を有してなり、「味噌」の文字部分が商品「みそ」を表すものであるとしても、本願指定商品と商品「みそ」とは、形状はもとより、その原材料、製法、用途等を異にするばかりではなく、概ねその販売場所を異にするものであるから、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品が「みそ」であるかの如く、その商品の品質につい誤認を生ずる虞はないものというべきである。
 したがって、本願商標を商標法第4条第1項第16号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当でなく、取り消すべきものである。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「」は、引用商標「LOUMADE/ルメード」とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れる虞のない非類似の商標、と判断された事例
(不服2007-29942、平成20年4月30日審決、審決公報第102号)
 
1 本願商標
 本願商標は、上掲の通りの構成からなり、第3類「せっけん類、歯磨き、化粧品、香料類、つけづめ、つけまつ毛、かつら装着用接着剤、つけまつ毛用接着剤、洗濯用でん粉のり、洗濯用ふのり、家庭用帯電防止剤、家庭用脱脂剤、さび除去剤、染み抜きべンジン、洗濯用柔軟剤、洗濯用漂白剤、塗料用剥離剤、靴クリーム、靴墨、つや出し剤、研磨紙、研磨布、研磨用砂、人造軽石、つや出し紙、つや出し布」を指定商品として、平成18年8月11日に登録出願されたものである。

2 引用商標
 原査定において本願の拒絶の理由に引用した登録2089369号商標(以下、引用商標という。)は、「LOUMADE」及び「ルメード」の文字を上下二段に横書きしてなり、昭和61年2月21日に登録出願、第4類「せっけん類(薬剤に属するものを除く)、歯磨き、化粧品(薬剤に属するものを除く)、香料類」を指定商品として、同63年10月26日に設定登録され、その後、平成10年6月30日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

3 原査定の拒絶理由の要点
 本願商標と引用商標とは称呼において類似の商標であって、それそれの指定商品も同一又は類似のものである。

4 当審の判断
 本願商標と引用商標は、上掲及び上記2の通りの構成からなるところ、それぞれの構成文字に照応して、本願商標は「ルメードゥ」の称呼を生じ、引用商標は「ルメード」の称呼を生ずるものである。
 そして、この「ルメードゥ」の称呼と「ルメード」の称呼とは、語尾において「ドゥ」と「ド」の音の差異を有し、それそれ母音が相違するものであることに加え、長音も含めて5音と4音という短い音構成からなることも相まって、この差異が両称呼全体に及ぽす影響は決して小さいものとはいえず、それそれを一連に称呼するも、語調、語感が相違し、十分に聴別し得るものであり、互いに聞き誤る虞はないというのが相当である。
 その他、本願商標と引用商標とが相紛れる虞があるとすべき特段の理由は見出せない。
 してみれば、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れる虞のない非類似の商標といわなければならない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するものであるとした原査定は、妥当なものでなく、取り消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '09/01/13