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商標「悠仁」は、皇族の名前として、日本全国において広く認識されているため、これを一私人が登録し、その商品について独占使用することは公の秩序を乱すばかりでなく、社会通念に照らし、社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の目的に反することになるから、商標法第4条第1項第7号に該当する、と判断された事例 (不服2007-25625、平成20年5月29日審決、審決公報第104号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「悠仁」の文字を標準文字で書してなり、第31類「生花の花輪、釣り用餌、ホップ、食用魚介類(生きているものに限る。)、海藻類、野菜、糖料作物、果実、コプラ、麦芽、あわ、きび、ごま、そば、とうもろこし、ひえ、麦、籾米、もろこし、飼料用たんぱく、飼料、種子類、木、草、芝、ドライフラワ}、苗、苗木、花、牧草、盆栽、獣類・魚類(食用のものを除く。)・鳥類及び昆虫類(生きているものに限る。)、蚕種、種繭、種卵、うるしの実、未加工のコルク、やしの葉」を指定商品として、平成18年9月12日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標は、日本の皇族である秋篠宮文仁親王様と文仁親王妃紀子様との間に生まれたお子様の名前である『悠仁』の文字と同じですから、このような商標を一企業である出願人が採択使用することは公の秩序に反し穏当ではない。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
(1)商標法第4条第1項第7号について 商標の構成(文字や図形等)それ自体において公の秩序又は善良の風俗を害する虞がある商標はもとより商標法第4条第1項第7号に該当するが、その構成自体においてはそうでなくても、当該商標の出願がその経緯において適正な商道徳に反し、社会通念に照らしてみれば、社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には、商標法第4条第1項第7号に該当することがあると解される(東京高裁平成14年(行ケ)第616号・平成15年5月8日判決参照)。 以上の観点を踏まえて、以下、本件について検討する。 (2)本願商標「悠仁」について 本願商標は、「悠仁」の文字を書してなるところ、日本の皇族である秋篠宮さまと同妃紀子さまの第3子が2006年9月6日にご誕生し、その命名の儀が同年9月12日になされ、その名前が「悠仁」さまであることは、当時のテレビや新聞等で大きく報道され、その周知性については日本全体に及ぶものと認められる。 上記した実情は、以下の新聞記事情報をみても十分に裏付けられるところである。 (ア)2008年3月29日朝日新聞朝刊38頁には、「秋篠宮悠仁さま、歩いた」の見出しの下、「秋篠宮ご一家は28日、静養のため栃木県高根沢町の御料牧場を訪れた。…一歳半になった長男悠仁さまが報道陣の前で初めて歩く姿もみられた。」との記載。 (イ)2008年1月25日読売新聞東京夕刊22頁には、「秋篠宮ご夫妻、インドネシア訪問から帰国」の見出しの下、「紀子さまにとっては、一昨年9月の悠仁さま誕生以来初めての海外訪問。」との記載。 (ウ)2007年12月23日共同通信には、「74歳誕生日祝い一般参賀『明るい年となるよう』」の見出しの下、「夕方から夜には、皇太子家の長女愛子さまや秋篠宮家の長男悠仁(ひさひと)さまも御所にあいさつに訪れたほか、天皇ご一家で夕食を共にされた。」との記載。 (エ)2007年12月14日朝日新聞東京朝刊37頁には、「『悠』仁さま人気続く『子』も見直され復権 07年人気の名前調査」の見出しの下、「男の子は、秋篠宮ご夫妻の長男、悠仁(ひさひと)さまが昨年誕生して以来、『悠』の人気が高まっている。」との記載。 (オ)2007年11月30日朝日新聞東京朝刊34頁には、「『天皇陛下の負担軽減を』秋篠宮さま42歳」の見出しの下、「秋篠宮さまは30日、42歳の誕生日を迎える。…長男悠仁さまの成長ぶりについて、秋篠宮さまは『一人で歩くようになりました』、紀子さまは‥」との記載。 (以下の新聞記事情報は省略) 以上よりすれば、本願商標の「悠仁」の文字が、査定時及び審決時において、秋篠宮さまと同妃紀子さまとの間に生まれたお子様の名前として、日本全国におい広く認識されているものと認められるものである。 そうすると、皇族の名前として、日本全国において広く認識されている「悠仁」の文字を、一私人である請求人が登録し、その商品について独占使用することは公の秩序を乱すばかりでなく、社会通念に照らし、社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の目的に反することになると言わざるを得ないものである。 なお、請求人は、単なる「悠仁」のみにおいては、天皇家の「悠仁」さまを特定することにはならず、さらに、一般人とて存在する名前「悠仁」の中の誰を指称するのかも特定できない旨主張しているが、査定時及び審決時において、「悠仁」の文字が日本の皇族である秋篠宮さまと同紀紀子さまの第3子の名前を表すものとて、広く日本国民に認識されていることは、上記で示した通りであり、「悠仁」の文字からは、上記皇族の名前を表しているものと認識するのが相当であるから、この請求人の主張は採用できない。 また、請求人は、日本の皇族の名前の文字と同じ商標が登録されている旨主張しているが、それらの登録例と本願商標とは、その構成及び態様が異なり、事案を異にするものといわざるを得ないものであり、そして、具体的事案の判断においては、過去の登録例に拘束されることなく検討されるべきものであるから、この請求人の主張も採用することができない。 したがって、本願商標を商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、これを取り消すことはできない。 よって、結論の通り審決する。 |