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 商標「isoPRO」は、「iso」と「PRO」とに分離して看取されるものであって、「国際標準化機構」(公益に関する団体であって営利を目的としないもの)の著名な略杯「ISO」と類似の標章を含むものであるから、商標法第4条第1項第6号に該当する、と判断された事例
(不服2008-8047、平成20年7月14日審決、審決公報第106号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「isoPRO]の欧文字を標準文字で表してなり、第9類「高速測定データ用収集装置,データーロガー,遠隔監視により計測したデータを保存し且つ要求に応じて保存データを送信する機能を有する情報収集装置,測定データ用絶縁式入力モジュ一ル,測定機械器具,電気磁気測定器,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、平成19年6月19日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、その構成中に国際的な単位・用語等の標準化を推進する国際標準化機構(International 0rganization for Standardization)の著名な略称である『ISO』の文字と類似する『iso』の文字を有しているから、上記公益団体である『ISO』と類似する商標と認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断をして本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 商標法第4条第1項第6号は、「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」を、商標登録を受けることができない商標と定めているところ、その趣旨は、ここに掲げる標章を一私人に独占させることは、本号に掲げるものの権威を尊重することや、国際信義の上から好ましくないという点にあるものと解される(特許庁編 工業所有権法逐条解説)。
 しかして、本願商標は「isoPRO」の欧文字よりなるところ、本願商標の書体は前半部の「iso]を小文字で書してなり、後半部の「PRO」を大文字で書してなるものであるから、外観上容易に、「iso」と「PRO」との両文字に分解して看取されるものであり、かつ、これを常に一体不可分のものとしてみなければならない特段の事情も見出し得ないものであることからすれば、該「iso」と「PRO」の各文字の結合度は決して強いということができない。
 ところで、原審説示の「国際標準化機構(英語表記:International 0rganization for Standardization)」は、「物資及びサービスの国際交流を容易にし、知的、科学的、技術的及び経済的活動分野の協力を助長させるために、世界的な標準化及びその関連活動の発展・開発を図ること」を目的に、スイス国ジュネーブに本部を置いて1947年に発足した国際機関であって、2008年1月には157カ国が参加しており、他方、我国では、1952年に日本工業標準調査会(JISC)が加入し、経済産業省もJIS規格やISO/IEC規格を始めとしたスタンダードの積極的な獲得と活用によって、企業の市場戦略と利便性の高い商品生産を全面的にバックアップすることに取り組んでいるものである。
 そうすると、「国際標準化機構」は公益に関する団体であって営利を目的としないものであり、その略称である「ISO」は、「国際標準化機構」を表示するものとして、我国のみならず、世界各国において、需要者の間に広く認識されている、いわゆる著名なものと認め得るものであるから、本願商標構成中の「iso」の文字は、上記「国際標準化機構」の著名な略称である「ISO」と類似するものというのが相当である。
 してみれば、本願商標は公益に関する団体として営利を目的としないものを表示する標章であって著名な略杯と類似のものを含む商標といわざるを得ない。
 これにつき請求人は、「isoPRO」の文字は「イソプロ]のように称呼される一連の分離不可の商標であるから、「iso」のみを切り離し、これが商標法第4条第1項第6号の公益に関する団体を表示する著名な標章に当たるとするのは妥当でない旨主張するが、本願商標は「iso」と「PRO」との両文字に分離して看取されることは、前記認定の通りであるから、請求人の主張は採用できない。
 また、請求人は過去の登録例において、「iso」や「ISO」を含むものが多数存在にいる旨主張するが、本願商標が商標法第4条第1項第6号に該当するか否かの判断は、個別、具体的に判断されるものであり、他の登録例に拘束されるものではないばかりか、請求人が登録例とに挙げた登録第5012504号商標(ISOコーディネ一タ−)は、登録異議の申立て(異議2007−900152)により、該商標は、「国際標準化機構」の著名な略称である「ISO」と同一又は類似する商標を含むものであるから、商標法第4条第1項第6号に違反して登録されたものである、としてその登録を取り消す旨の異議の決定が平成20年1月24日になされ、その確定登録が同年4月25日になされたものである。よって、この点に関する請求人の主張も採用することができない。
 してみれば、本願商標が商標法第4条第1項第6号に該当するとの原査定は妥当なものであって、これを取り消すことはできない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '09/04/05