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A. 商標「仙台ぎゅうぎゅう詰め弁当」は、特定の商品の品質等を直接的、かつ、具体的に表示するものとして、取引者、需要者に認識、把握されるとは言い難く、むしろ、一体不可分の一種の造語として、自他商品の識別機能を有する、と判断された事例
(不服2008-18416、平成20年10月10日審決、審決公報第108号)
 
1 本件商標
 本件商標は、「仙台ぎゅうぎゅう詰め弁当」の文字を標準文字により表してなり、第30類「べんとう」を指定商品として、平成19年7月10日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『仙台ぎゅうぎゅう詰め弁当』の文字よりなるところ、これよりは『具がいっぱいに詰まった仙台で製造・販売される弁当』程を意味するため、これをその指定商品に使用しても前記意味合いをアピールさせるに止まり、結局、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は前記1の通り「仙台ぎゅうぎゅう詰め弁当」の文字を標準文字により表してなるところ、これを構成する数字は同書、同大、同間隔をもって外観上纏まり良く一体不可分に表わされているものである。
 そして、その構成中の「仙台」の文字は地名を表し、「ぎゅうぎゅう詰め」の文字が「隙間がないほど人や物が入っていること。」(広辞苑第五版)を意味し、さらに「弁当」の文字は指定商品の普通名称を表示するものである。
 しかして、これらの文字を組み合わせた本願商標全体から原審説示の如き意味合いを認識させるとしても、これが、特定の商品の品質等を直接的、かつ、具体的に表示するものとして、取引者、需要者に認識、把握されるとは言い群く、むしろ、かかる構成においては、これに接する取引者、需要者に、一体不可分の一種の造語として、認識されるとみるのが自然である。
 さらに、当審において職権をもって調査するも、本願商標を構成する文字が、その指定商品を取り扱う業界において、原審説示の如き意味合いを表示するものとて、取引上、普通に使用されている事実を見出すことができなかった。
 してみれば、本願商標はその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして、何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとは言い得ず、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たしうるものというべきである。
 したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当ではなく、取り消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「小槌本舗」(別掲参照)は、前半部の「小槌」の文字部分に着目して取引に当たるとは考え難く、構成全体をもって一体不可分のものと認識され、単なる「コヅチ」の称呼は生じないから、引用商標(別掲参照等)とは称呼上非類似である、と判断された事例
(不服2008-8245、平成20年10月28日審決、審決公報108号)

別掲1(本願商標)


別掲2(引用商標)
 
1 本願商標
 本願商標は別掲1の通り「小槌本舗」の漢字を筆書き風に縦書きしてなり、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、平成19年8月28日に登録出願されたものである。

2 引用商標
 原審において、本願の拒絶理由に引用した登録商標は、次の通りであり、それらの商標権は、現に有効に存続しているものである。
 (1) 登録第1510890号商標は、「こづち」の文字を横書きしてなり、昭和52年6月23日に登録出願され、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同57年4月30日に設定登録されたものである。その後、平成4年5月28日及び同14年1月8日の2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同年1月23日指定商品を第30類「菓子、パン」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
 (2) 登録第4413677号商標は、別掲2の通り、図形とその下に「小槌」の文字を横書きしてなり、平成11年7月7日に登録出願され、第30類及び第31類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同12年9月1日に設定登録されたものである。
 以下、これらを併せて「引用商標」という。


3 当審の判断
 本願商標は、別掲の通り「小槌本舗」の漢字を筆書き風に縦書きしてなるところ、構成各文字は同じ書体、同じ大きさで等間隔に外観上纏まり良く一体に表されており、しかも、構成文字全体に相応して生ずる「コヅチホンポ」の称呼は、淀みなく一連に称呼できるものである。そして、たとえ、その構成中後半の「本舗」の文字が「本店。特定商品を製造販売する大元の店。」(株式会社岩波書店/広辞苑第五版)の意味を有する語であるとしても、纏まり良く一体に表された本願商標から、直ちにこれを省略し、前半部の「小槌」の文字部分に着目して取引に当たるとは考え難く、むしろ、その構成全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるとみるのが自然である。
 そうすると、本願商標では、その構成文字全体に相応して、「コヅチホンポ」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。
 したがって、本願商標より、「コヅチ」の称呼をも生ずると、その上で、本願商標と引用商標とが称呼上類似するものとして、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、妥当ではなく、取り消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '10/02/25