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商標「東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団」は、「登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」には該当しないものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当しない、と判断された事例 (不服2008-26083、平成21年1月30日審決、審決公報第111号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団」の文字を標準文字で表してなり、第41類に属する願書記載の通りの役務を指定役務として、平成19年3月16日に登録出願、その後、指定役務については、当審における同20年12月18日付手続補正書により、第41類「音楽の演奏の興行の企画又は運営(自主公演に関するものに限る。)、音楽の演奏(自主公演に関するものに限る。)」に補正されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は『東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団』の文字を標準文字で表してなるところ、『東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団』は、1973年に結成された日本新交響楽団を前身とし、1997年に今の楽団名に改称した後、定期演奏会、名曲コンサートなど広範囲に亘る音楽活動をしている楽団の名称であり、出願人が上記楽団との関係において、本願商標を出願する正当な地位にあるとは認められないことから、本願商標をその指定役務について使用すると、出願人が上記楽団と何等かの関係を有するものであるかの如く需要者が誤認、混同を生ずる虞があり、その結果、商取引の秩序を害する虞があるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
1 商標法第4条第1項第7号について 商標法第4条第1項第7号(以下「本号」という。)において、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができない旨規定している。 そして、高等裁平成17年(行ケ)第10349号(判決日平成18年9月20日)(以下「高等裁判決1」という。)において、「商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと堤定する。ここでいう『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』には、 1 その構成が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、 2 当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会の公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、 3 他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、 4 特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、 5 当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、 などが含まれるというべきである。」旨判示されでいる。 また、高等裁平成14年(行ケ)第616号(判決日平成15年5月8日)において、「商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き、その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には、その商標は商標法第4条第1項第7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし、同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、及び、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである」旨判示されている。 そこで、以上の観点から本件について検討する。 2 本願商標の本号の該当性について (1) 本願商標の構成が公序良俗に反するものであるかについて 本願商標は、前記1の通り「東京ユニバーサルフィルハーモニー管弦楽団」の文字を書してなるところ、本願商標は高等裁判決1にいう「その構成が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形」に該当するものではなく、その構成自体は何ら公の秩序又は善良の風俗に反するものとは認められないものである。 (2) 当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するかについて 請求人(出願人)(以下「請求人」という。)は、平成20年1月25日付意見書により、「自主公演運営の移管に関する覚え書」(第6号証)て以下「覚え書」という。)及び「東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団自主公演の運営に関するお知らせ」(第7号証)(以下「自主公演の運営に関するお知らせ」という。)を提出している。 そして、「覚え書」を徴するに「東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団」(以下「楽団」という。)の代表理事河村隆司及び事務局長河村隆三により、楽団の第21回定期演奏会以降の運営について、請求人に依頼し、請求人はそれを受諾している事実が認められる。 また、「自主公演の運営に関するお知らせ」を徴すると、楽団代表理事河村隆司により、楽団の自主公演の運営について、請求人に委任している事実が見受けられる。 このことから、請求人は、本願商標「東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団」を使用し、第21回以降の定期演奏会を開催することについて、楽団から承諾を受けているものとみるのが相当である。 請求人の提出する第16号証乃至第18号証等によれば、請求人が本願商標「東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団」の名称を使用し、実際に、定期演奏会を開催している事実も認められる。 そして、請求人が、本願商標を使用し、定期演奏会を開催したことによって、需要者等に混乱を生じさせている事実がある等、商取引においてその秩序を欠くものと認めるに足りる証拠や事実も見当たらない。 そうとすると、本願商標は、「登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」には該当しないものであるから、出願人が、本願商標をその指定役務に使用しても、商取引の秩序を害する虞があるものとはいえない。 (3) 本願商標が、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」であるとする、その他の理由も見当たらない。 (4) まとめ したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結諭の通り審決する。 |