最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「饂麺」は、「汁で煮たうどん」の意味を有するとしても、指定商品の普通名称を表示する文字よりなるものとはいえず、また、商品の品質について誤認を生じさせる虜もない、と判断された事例
(不服2008-18918、平成21年3月19日審決、審決公報第113号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「饂麺」の文字を標準文字で表してなり、第30類に属する願書に記載の通りの商品を指定商品として、平成19年8月30日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『汁で煮たうどん』の意味である『饂麺』の文字を普通に用いられる方法で書してなるものであり、これを本願指定商品中、例えば、『調理済みの饂麺』に使用するときは、単に商品の普通名称を表示するに過ぎない。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第1号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずる虞があり、同法第4条第1項第16号に該当する収」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、上記1の通り「饂麺」の文字よりなるところ、該文字が原審説示の通り、「汁で煮たうどん」の意味を有する語であることが認められるとしても、職権をもって調査したが、「饂麺」の文字が、その指定商品を取り扱う業界において、商品の普通名称を表示するものとして普通に使用されている事実は発見できなかった。
 してみれば、本願商標はその指定商品の普通名称を表示する文字よりなるものとは言えず、また、これをその指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせる虞もないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第1号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当ではなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り決定する。


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B. 商標「白いマスク様の図形(別掲参照)」は、「背景」、「マスク」及び「流線図形」が纏まり良く一体的に構成され、「マスク」を基調とする独創的な図形よりなるもので、その形状や表現方法が簡単なものとすべきではなく、特異性を有するから、商品「花粉症用マスク」について自他商品の識別機能を有する、と判断された事例
(不服2006-20287、平成21年3月27日審決、審決公報第113号)
別掲(本願商標)
 
1 本願商標
 本願商標は、別掲に示す通りの構成よりなり、第5類の商品を指定商品として、平成16年6月22日に登録出願(その後、指定商品については、第5類「花粉症用マスク」に補正)されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、青色系統のグラデーションからなる背景に白いマスクと覚しき図と、それを横切るように水色系統のグラデーションからなり、帯状に絹く、長い二辺が曲線からなる流線的な三角形を配してなるところ、その指定商品との関係において、白いマスク様の図形は商品の形状を表すものであり、また、それを横切る図形の形状・表現方法は簡単なもので、本願商標の構成全体も格別に特異なものとは言い難い。してみれば、本願商標は自他商品の識別機能を果たすものとは認められず、これを本願指定商品に使用しても需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、別掲に示す通り、青を基調とするグラデーションを施した横長四角形を背景(以下、「背景」という。)に「白いマスク」様の図形(以下、「マスク」という。)を配し、マスクの前方にその右側部分から左側部分にかけて、水色を基調とするグラデーションを施した流線状の三角図形(以下、「流線図形」という。)を配してなるものである。
 しかして、本願商標の構成を見るに、「マスク」の中心部分を横切るように描かれた「流線図形」と「背景」とは、共に青系統の色彩に濃淡を施すことにより、白を基調とする「マスク」との一体性を際立たせている態様からなるものであるから、本願商標は、全体として、外観上纏まり良く一体的に構成されているものと認められる。そして、たとえ、本願商標構成中の「マスク」が、本願の指定商品との関係で、商品の形状を表すものと認識させ、かつ、「マスク」様の図形は、商品の形状を表示するものとして、一般に使用されていることから、「マスク」の部分については、自他商品の識別機能を有しないと看取されるものであるとしても、「背景」、「マスク」及び「流線図形」が纏まり良く一体的に構成された本願商標からは、それぞれの図形部分を分離し、観察しなければならない特段の事情は見当たらない。さらに、「流線図形」を結合した「マスク」の図形が、需要者・取引者に、商品「花粉症用マスク」の形状や効能及び品質等を表示するものと認識させる等、かかる図形部分が自他商品の識別機能を有しないと認定すべき事情も見当たらない。
 そうとすれば、本願商標は、「マスク」を基調とする独創的な図形よりなるもので、その形状や表現方法が簡単なものと認定すべき理由はなく、本願商標の態様は、特異性を有するものとみるのが相当である。そして、当審において職権により調査すると、請求人(出願人)が、本願商標をその取扱いに係る商品に使用している事実は認められるものの、本願商標が、その指定商品の業界において、商品の形状や品質等を表示するものとして、取引上普通一般に使用されている事実を発見することができなかった。
 してみれば、本願商標をその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を十分果たし得るものというべきであって、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '10/03/08