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A. 商標「千の風になって」は、公の秩序又は善良の風俗を害する虞はないから、商標法第4条第1項第7号に該当しない、と判断された事例
(不服2008-27930、平成21年3月31日審決、審決公報第114号)
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1 本件商標 |
本願商標は、「千の風になって」の文字を標準文字で表してなり、第33類「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒」を指定商品として、平成19年2月15日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、『千の風になって』の文字を書してなるところ、該文字は日本のテノール歌手・秋川雅史のシングルで2006年5月24日発売で、発売以降人気を高めて2006年末にNHKの『第57回NHK紅白歌合戦』への出場が内定して大きな注目を浴びることとなり、紅白出場内定後は急激にオリコンチャートを駆け上がり、翌年オリコンシングルチャートで1位を獲得したことから、全国的に著名となったものである。そうすると、これに何らの関係を有しない一私人が独占的に採択使用することは、社会公共の利益に反するもので穏当でない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は、前記1の通り、「千の風になって」の文字よりなるところ、該文字は、2001年に作家の新井満がアメリカ発祥で作者不詳の詩「Do not stand at my grave and weep」に日本語の訳詞と曲をつけ発表したものである。そして、2006年にテノール歌手の秋川雅史がシングルとして発表し、同年の第57回NHK紅白歌合戦への出場を機に一般的に知られることとなったものである。 しかして、本願商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものでないことは明らかであり、また、本願商標をその指定商品に使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものとは言い難く、さらに、他の法律によってその使用が禁止されているものとすべき事実も認められないものである。 そうすると、本願商標は、公の秩序又は善長の風俗を害する虞がある商標というべきではない。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
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1 本願商標 |
本願商標は、別掲の通りの構成よりなり、第16類及び第21類に属する願書記載の通りの商品を指定商品として、平成19年4月27日に登録出願(その後、指定商品については、第21類「箸、箸箱、箸おき」に補正)されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、『マイ箸』の文字と楕円とその中に『8483』の数字、さらに、その円上に2本の斜線を引いてなる態様よりなるところ、『マイ箸』の文字は自分専用の箸を意味するものであり、『自分専用の箸袋・箸・箸箱・箸おき』を認識させるに止まるものであり、さらに数字を含んだその他の部分も自他商品の識別力を有しないものと認められるので、これを本願の指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は、何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は、別掲の通り、「マイ箸」の文字と横長楕円の左下に2本の直線を斜めに配した図形内に「8483」の数字を表した部分よりなるところ、その構成中の「マイ箸」の文字部分は、「マイ」の文字が「私の」を意味する親しまれた語であることから、容易に「私の箸」の意を看取させるものであり、本願指定商品との関係においては、該文字部分は、これに接する需要者に単に「自分専用の箸」程の意味合いを認識させるに止まり、自他商品の識別力を有しないものというのが相当である。 一方、構成中の図形部分は、楕円の左下にかかるように2本の直線を斜めに配した特徴のある態様からなるものであるから、これは、輪郭として普通に用いられているものとは言えず、数字とありふれた円輪郭からなるものとは言い難いものである。 してみれば、本願商標に接する取引者、需要者は、その構成中の図形部分において前記特徴を有するものとして印象付けられるとみるのが相当であるから、本願商標をその指定商品に使用しても、十分に自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえないものである。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |