最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 商標「DECO」は、独創的で特異な態様と認識される程度にまで図案化され、「DECO」の文宇を表したものと直ちに認識し得ない引用商標「」とは、称呼上も非類似と判断された事例
(不服2008-15809、平成21年5月21日審決、審決公報第115号)
 
1 本件商標
 本願商標は、「DECO」の文字を標準文字により表わしてなり、第28類「粘土、その他のおもちや、人形」を指定商品として、平成19年6月15日に登録出願されたものである。

2 引用商標
 原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第3058919号商標(以下、「引用商標」という。)は、上掲の通りの構成よりなり、平成4年9月29日登録出願、第28類「遊戯用器具、ビリヤード用具、囲碁用具、将棋用具、さいころ、すごろく…マージャン用具、おもちや、人形、愛玩動物用おもちや、運動用具等」を指定商品として、同7年7月31日に設定登録され、その後、同17年2月15日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

3 当審の判断
 引用商標は、上掲の通り4個の図形より表わされてなるところ、各図形は文字を表すのに用いられる方法の範囲を逸脱した独創的で特異な態様よりなることから、これが「DECO」の文字を表したものとは、直ちに認識し得ない程度にまで図案化されていると認められるものである。
 そうとすれば、引用商標は、何らかの文字を想起、認識するものとはいえないことから、これより特定の称呼、観念は生じ得ないものと判断するのが相当である。
 したがって、引用商標より「デコ」の称呼が生ずるとし、そのうえで、本願商標と引用商標が称呼上類似するものとして、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 商標「」は、氏姓の一つであるけれども、東京23区全区版ハローページへの掲載が165とさほど多いものとはいえないものであり、また、カツラ科の落葉高木や、京都市西京区桂川西岸の地域を表すものとしても知られているため、特定の氏姓のみを直ちに想起させるものとはいえないから、商標法第3条第1項第4号に該当しない、と判断された事例
(不服2008-24815、平成21年5月25日審決、審決公報第115号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「桂」の文字と「かつら」の平仮名文字を上下二段に横書きしてなり、第16類「紙類、文房具類、印刷物、書画」を指定商品として、平成19年10月31日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶理由の要旨
 原査定は、「本願商標は、ありふれた氏の一つである『桂』の文字と、その読みと認められる『かつら』の平仮名文字とを普通に用いられる方法で表示してなるものである。従って、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する」旨、認定、判断して本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、「桂」の文字と「かつら」の平仮名文字を上下二段に横書きしてなり、下段の平仮名文字は上段の漢字の読みを表したものと認められるものであるところ、「桂」の文字は、氏姓の一つであるものの、東京23区全区版ハローページ(1996.3〜1997.2)への掲載が165とさほど多いものとはいえないものであり、また、カツラ科の落葉高木や、京都市西京区桂川西岸の地域を表すものとして、一般に知られているところである。
 してみれば、本願商標は、上記した複数の意味合いを想起させるものであって、特定の氏姓である「桂」のみを直ちに想起させるものとはいえないことから、単にありふれた氏を普通に用いられる方法で書したものとは言い難く、自他商品の識別機能を果たすものというのが相当である。
 したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第4号に該当するものであるとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものでなく、取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '10/03/10