最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「」は、「駄」の文字から反時計回りに下段右側の「屋」の文字までを「駄菓子屋」と読む場合があるとしても、これが、「普通に用いられる方法で書してなるもの」とは言い難く、むしろ、横書きと縦書きとの一般的な読み方に倣い「菓駄子屋」又は「駄屋菓子」と認識され、二重に描かれた四角形の輪郭図形とが一体となった特異な構成からなるものというべきであるから、自他役務識別標識として機能し得、役務の質について誤認を生じさせる虞はない、と判断された事例
(不服2008-1180、平成21年7月24日審決、審決公報第117号)
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1 本件商標 |
本願商標は、上掲の通りの構成よりなり、第43類の役務を指定役務として、平成19年2月19日に登録出願されたものである(その後、指定役務については第43類「そばの提供、アルコール飲科を主とする飲食物の提供」と補正されたものである。)。
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2 原査定の拒絶の理由(要旨) |
原査定は、「本願商標は、ありふれた二重の四角形枠内に『粟・豆・くず米等の安価な材料を用いた大衆的な菓子を提供するところ』程の意味合いを認識させる『駄菓子屋』の文字を普通に用いられる方法で書してなるに過ぎないから、これを本願指定役務中例えば、『菓子の提供』に使用しても、これに接する需要者等は、単に、『駄菓子を提供するところ』程の意味合いを認識するものと認められるので、本願商標は単に役務の質(内容)を表示するに過ぎないものと認める。従って、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせる虞があるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は上掲の通り、二重の枠線と漢字四文字を組み合わせた構成からなるところ、該漢字四文字を囲むように太い線と細い線で二重に描かれた四角形の輪郭部分は、ありふれた輪郭を表してなるものというよりは、むしろ、一種独特な輪郭線との印象をもって看取されるものというべきである。 そして、該輪郭線内には、上段左側より「菓駄」の漢字を、また、下段左側から、「子屋」の漢字をそれぞれ、同書、同大に全体として纏まりよく表してなるものである。 ところで、日本語の表記方法には「横書き」と「縦書き」とがあり、そのうち、「横書き」の場合には、各行は左から右へ読み、上から下へ改行して、さらに左から右へと読み進め、また、「縦書き」の場合には、各行は上から下に読み、右から左ヘ改行して、さらに上から下へと読み進めるのが一般的であるから、構成中の該文字部分は「菓駄子屋」又は「駄屋菓子」と認識され、把握されるとみるのが自然である。 そうすると、仮に、構成中上段右側の「駄」の文字から反時計回りに下段右側の「屋」の文字までを「駄菓子屋」と読む場合があるとしても、これが、「普通に用いられる方法で書してなるもの」とは言い難いものであるから、むしろ、本願商標は「菓駄子屋」又は「駄屋菓子」と認識され、把握される文字及び、これらの文字を囲むように太い線と細い線で二重に描かれた四角形の輪郭図形とが一体となった一種特異な構成からなるものというべきである。 してみれば、本願商標はこれをその指定役務に使用しても、自他役務識別標識としての機能は十分果たし得るものと言わなければならず、また、何ら役務の質について誤認を生じさせる虞はないものと言わなければならない。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとした原査定は、妥当ではなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「M2P」は、同書、同大、等間隔で、纏り良く外観上一体的に表され、役務を管理するための符号の一類型というよりも、むしろ、一体的に把握される一種の造語と認識されるものであるから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とは言い難く、自他役務の識別標識としての機能を有する、と判断された事例
(不服2008-650095、平成21年6月10日審決、審決公報第117号)
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1 本願商標 |
本願商標は、「M2P」の文字を横書きしてなり、第37類、第41類及び第42類に属する国際登録において指定された役務を指定役務として、2006年(平成18年)11月8日を国際出願日とするものである。
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2 原査定の拒絶の理由の要点 |
原査定は、「本願商標は、『M2P』の文字を横書きしてなるところ、これは、役務の管理のための符号を表したものと理解するに止まるものであり、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認める。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨訟定、判断して本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は、前記1の通り、「M2P」の文字を横書きしてなるところ、構成各文字は、同書、同大、等間隔で書され、まとまりよく外観上一体的に表されているものである。 そして、本願の指定役務を取り扱う業界において、上記組み合わせからなる本願商標が類型的に使用されているとまで言うことはできず、これをその指定役務に使用した場合、これはする取引者・需要者は、これを、役務を管理するための符号の一類型であると直ちに理解するというよりも、むしろ、一体的に把握される一種の造語であると認識するものとみるのが相当である。 さらに、当審において職権にて調査するも、本願指定役務にかかる業界において、本願商標が、役務の種別や規格等を表示するための符号として一般に使用されている事実を発見することができなかった。 してみれば、本願商標は極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標とは言い難く、自他役務の識別標識としての機能を十分に果たすものと認められる。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |