最近の注目審決・判決を紹介します。

A.  商標が別掲1から別掲2へ補正され、付記的文字「NEW YORK」が削除されたため、いずれの指定商品に使用しても、商品の品質誤認を生じさせる虞のないものとなったから、商標法第4条第1項第16号に該当しない、と判断された事例
(不服2009-8360、平成21年8月20日審決、審決公報第118号)
 
1 本願商標
 本願商標は、別掲1の通りの構成よりなり、第14類「装飾品、宝石箱(小箱)、身飾品、時計」、第18類「かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ」及び第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品として、平成20年4月11日に登録出願されたものである。その後、本願商標については、当審における平成21年8月18日付手続補正書により、別掲2の通り補正された。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)
 原査定は、「本願商標は、その構成中に『NEW YORK』の文字を有してなるものであるから、これを本願の指定商品中『米国製の商品』以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせる虞があるものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第16号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、別掲2の通り、その構成中の単に付記的に用いられていた商品の産地、販売地を示す「NEW YORK」の文字を削除する補正がなされた結果、その指定商品中のいずれの商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせる虞のないものとなった。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第16号に該当するとして、本願を拒絶した原査定の拒絶の理由は解消した。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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B. 第28類の商品を指定商品とする商標「角ケシ」は、コクヨ株式会社が商品「消しゴム」について使用する著名商標「カドケシ」とは、商標が類似するけれども、商品の生産者、販売者、取扱系統、用途、原材料等を異にするから、企業の多角経営の実情を考慮したとしても、商品の出所について混同を生じさせる虞はない、と判断された事例
(不服2008-29127、平成21年8月19日審決、審決公報第118号)
 
1 本願商標
 本願商標は、「角ケシ」の文字を横書きしてなり、第28類「おもちや、人形、ゲーム用具、スキーワックス、遊園地用機械器具(「業務用テレビゲーム機」を除く。)、愛玩動物用おもちゃ、囲碁用具、歌がるた、将棋用具、さいころ、すごろく、ダイスカップ、ダイヤモンドゲーム、チェス用具、チェッカー用具、手品用具、ドミノ用具、トランプ、花札、マージャン用具、遊戯用器具、ビリヤード用具、運動用具」を指定商品として、平成19年8月10日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)
 原査定は、「本願商標は、『角ケシ』の文字を普通に用いられる方法で表してなるところ、『コクヨ株式会社(大阪市東成区大今里南6丁目1番1号)』が商品『消しゴム』について使用している著名な商標『カドケシ』と類似し、紛らわしいものであるから、本願商標をその指定商品について使用するときは、恰も前記会社と何らかの関係を有する商品であるかの如く商品の出所について混同を生ずる虞があるものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 本願商標は、前記1の通り「角ケシ」の文字を横書きになるところ、該文字は原審説示の通り、コクヨ株式会社が商品「消しゴム」について使用し、かつ、その取引者、需要者間において広く知られている商標「カドケシ」(以下、「引用商標」という。)と類似するものであるとしても、引用商標は上記会社が商品「消しゴム」に使用する個別商品毎の商標であって、その著名性は、使用する商品とのつながりが深く一定の限界があるものと言える。
 そして、本願の指定商品は、前記1の通り第28類に属する商品であり、引用商標の使用に係る商品「消しゴム」とは、商品の生産者、販売者、取扱系統、用途、原材料等を異にする商品である。
 そうとすると、近年の企業の多角経営の実情を考慮したしても、前記の引用商標の周知性の度合い及び商品間の関連性を合わせて考慮すると、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起するとはいえず、その商品が前記会社又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせる虞はないと判断するのが相当である。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は取消しを免れない。
 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '10/03/16