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 商標「SOHKEN/創建」は、大阪市所在の「株式会社創建」が役務「建物の売買,土地の売買等」について使用し、当該登録出願前より取引者、需要者間に広く認識されている引用商標「創建」と同一又は類似であり、かつ、前記役務と同一又は類似の役務に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する、と判断された事例
(不服2008-5883、平成22年3月24日審決、審決公報第126号)
 
第1 本願商標
 本願商標は、「SOHKEN」の欧文字と「創建」の漢字を上下二段に書してなり、第36類「建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供等」を指定役務として、平成18年6月22日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、大阪市所在の『株式会社創建』が役務『建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介』等について使用し、本願商標の登録出願前より取引者、需要者間に広く認識されている商標『創建』(以下、『引用商標』という。)と同一又は類似であり、かつ、前記役務と同一又は類似の役務に使用するものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当番の判断
1 商標法第4条第1項第10号の該当性について
(1)「株式会社創建」について
 「株式会社創建」は、そのホームページにおける会社概要によると、大阪市に所在し、昭和58年3月1日に創業した「建売住宅・マンション等の販売」等を行う法人である。

(2)引用商標「創建」の周知性について
 前記会社は、遅くとも平成4年から本願の出願日前までに大阪府を中心とする関西圏において、マンション及び戸建て住宅の販売等を行い、その際に、前記会社の略称でもある「創建」の標章を使用している事実が認められる。
 そして、前記会社のホームページにおける「マンション事業実績」によると、平成4年から平成19年までの間の「マンション」の取扱数は3200戸を超えており、また、前記会社のホームページにおける「戸建住宅事業実績」によると、平成7年から平成21年までの間の「戸建住宅」の取扱数は3800戸を超えていることからすれば、関西圏を中心として、中部地域及び関東圏の広範囲にわたり、相当数のマンション等の住宅の販売を行っていることが確認できるものである。
 してみると、「創建」の標章は、本願の出願日前から「株式会社創建」の使用する標章として取引者、需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。


(3)本願商標の商標法第4条第1項第10号の該当性について
ア 本願商標と引用商標との同一性又は類似性について
 本願商標は「SOHKEN]と「創建」の文字を上下二段に書してなり、その構成文字から「ソーケン」の称呼を生ずるものである。他方、引用商標は「創建]の文字からなり、「ソーケン」の称呼を生ずるものである。
 しかして、共に特定の意味合いを看取させないものであるから、観念において比較することができないとしても、「ソーケン」の称呼を共通にするものである。
 しかも、本願商標構成中の「創建」の文字と引用商標「創建」の文字とは、同一の文字よりなるものであるから、両商標は、外観において同一又は類似する商標であると判断するのが相当である。
 したがって、本願商標と引用商標とは、共に、特定の観念が生じないことから、観念において比較できないものであるとしても、「ソーケン」の称呼を共通にし、外観上も同一又は類似する商標である。
イ 本願商標の指定役務と引用商標に係る役務との同一性又は類似性について
 本願商標の指定役務と引用商標に係る役務とは、役務「建物の売買,建物の売買の代理又は媒介」において共通するから、同一又は類似する役務であると認められる。
ウ 小括
 したがって、本願商標は株式会社創建の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その役務又はこれらに類似する役務について使用するものである。

2 請求人(出願人)(以下、「請求人」という。)の主張について
 請求人は、本願商標がその出願時には請求人の略称を表示するものとして周知になっていた旨主張し、証拠資料を提出したが、結局その主張は認められなかった(詳細は審決ご参照)。


3 まとめ
 以上からすると、本願商標が商標法第4条第1項第10号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことができない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '10/11/29