最近の注目審決・判決を紹介します。
A. 商標「」は、構成中の「缶弁当」の文字が一種の造語として、自他商品の識別機能を果たし得る、等と判断された事例
(不服2009-24258、平成22年8月25日審決、審決公報第130号)
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1 本願商標 |
本願商標は上掲の通りの構成よりなり、第29類及び第30類の商品を指定商品として、平成20年12月4日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由 |
原査定は、「本願商標は3つの黒い円を隣と一部重なるように横一列に配した図形の内部に白抜きで『缶弁当』の文字を書してなる処、『缶』の文字は『缶詰、缶入りの商品』に通じ、『缶入りの弁当』が製造等されている実情がある。上記表現方法は文字を強調するために通常行われている表現方法の一つに過ぎない。そうとすれば、本願商標は『缶入りの弁当』程の意味合いを表したもの等と認識するに止まり、これに接する需要者等は、自他商品識別標識とは認識しないというのが相当である。従って、本願商標は商標法3条1項6号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせる虞があるので、商標法4条1項16号に該当する。」と認定、判断して本願を拒絶したものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は3つの黒塗り円を隣の円と一部重なるように横一列に配し、「缶弁当」の各文字を夫々各円内に白抜きで書してなるものである処、「缶」が「金属製の円筒形の容器」を意味する語であり、食品業界では「缶ジュース」「缶コーヒー」等のように「缶入り」の商品であることを示す略語として、「缶」の文字を語頭部分に使用していることがあるとしても、「缶詰」の略語として使用されてないことも相挨って、構成中の「缶弁当」の文字が原審説示の意味合いを直ちに理解させるとは言い難く、構成全体をもって一種の造語を表したものと認識されるのが相当である。 また、当審において職権をもって調査するも、本願指定商品を取扱う業界において、「缶弁当」の文字が「缶入りの弁当」を表すものとに普通に使用されている事実も見出せなかった。 そうすると、本願商標は特定の意味合いを認識させるものではない。 してみれば、本願商標は指定商品について自他商品の識別機能を果し得るものであって、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できないとはいえない。又、いずれの指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生ずる虞もない。 従って、本願商標が商標法3条1項6号及び4条1項16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
B. 商標「優」は、引用商標「Hiゆう」より単なる「ユウ」の称呼を生じないから、称呼上も非類似、と判断された事例 (不服2009-17202、平成22年9月8日審決、審決公報第130号)
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1 本願商標 |
本願商標は「優」の文字を標準文字で表してなり、第11類の商品を指定商品として、平成20年6月30日に登録出願されたものである(指定商品は後に補正されている。)。
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2 引用商標 |
原査定において、本願商標が商標法4条1項11号に該当するとして、拒絶理由に引用した登録第4347786号商標は、上掲の通りの構成よりなり、平成10年5月29日登録出願、第11類の商品を指定商品として、同11年12月24日に設定登録、同21年12月15日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
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3 当審の判断 |
本願商標は「優」の文字からなり、「ユウ」の称呼を生ずるものである。 一方、引用商標は「Hiゆう」と横書きしてなる処、「Hi」と「ゆう」の各文字は、同一の書体、同一の間隔で外観上纏まり良く一体的に表されているものである。 また、構成文字全体から生ずる「ハイユウ」又は「ヒユウ」の称呼も冗長というものではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。 そして、「Hi」の文字が「高級な、上等の」等を意味する英語の「high」に通じるとしても、かかる構成にあっては、引用商標に接する需要者等をして、前半の「Hi」の文字を省略し、後半の「ゆう」の文字のみに着目して、該文字から生ずる称呼をもって取引に当るというよりも、むしろ、構成全体をもって一体不可分のものと認識、把握し、商取引に当るとみるのが自然である。 そうとすると、引用商標はその構成文字全体に相応して、「ハイユウ」又は「ヒユウ」の称呼を生ずると判断するのが相当である。 従って、引用商標より「ユウ」の称呼をも生ずるとし、本願商標と引用商標とが称呼上類似するとして、本願商標を商標法4条1項11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。 その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |