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 別掲1商標は、ブラジル連邦共和国政府の公的印章(別掲2)と類似であるから、同国政府と何ら関係のない一私人が自己の登録商標として採択使用することは、同国政府がコーヒーについて用いる印章の権威を損なうことにも通ずるものであり、また、国際信義並びに公序良俗に反する、と判断された事例
(不服2009-10703、平成22年7月21日審決、審決公報第131号)
別掲1
(本願商標)
別掲2
(本件商標)
 
1 本願商標
 本願商標は別掲1の通りの構成よりなり、第35類に属する願書記載の通りの役務を指定役務として、平成20年1月29日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、ブラジル連邦共和国政府が商品コーヒーについて用いるもので、平成6年4月26日通商産業省告示302号により通商産業大臣が指定した印章と類似のものであり、これを同国政府と何ら関係のない一私人である出願人が自己の商標として採択使用することは、同国政府が商品コーヒーについて用いる印章の権威を損ない、国際信義並びに公序良俗に反するものと認められるものであり、穏当を欠くものといわざるを得ない。したがって、本願商標は商標法4条1項7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)本願商標の商標法4条1項7号の該当性について
 本願商標は別掲1の通り、8枚の植物の葉に丸い実が3個成っている植物をモチーフにデザイン化した図形を表してなるものである。
 通商産業省告示第302号で告示された標章(以下「本件商標」という。)は、商標法(昭和34年法律第127号)4条1項5号の規定に基づき経済産業大臣が「ブラジル連邦共和国政府が用いる印章/商品 コーヒー」として指定する標章の一(別掲2)であり、緑色の8枚の葉に赤く丸い実が3個成っている植物をモチーフにデザイン化した図形を表し、その下部に「CAFE DO」及び「BRASIL」の欧文字を二段に書してなるものである。
 そこで、本願商標と本件商標の図形部分を比較するに、両者は縦横比等において、微差を有するが、共に一見に酷似した図形を表したものと看取されるものであって、主な相違点は、モノクロであるか色彩が施されているかを異にするのみであるものと認められる。
 そして、本件商標は、該図形部分においても要部足り得るものであるから、本願商標と本件商標は、外観において類似するものである。
 そうすると、このようなブラジル連邦共和国政府の公的印章と類似の商標を、同国政府と何ら関係のない一私人と認められる請求人が独占排他権を有する自己の登録商標として採択使用することは、同国政府がコーヒーについて用いる印章の権威を損なうことにも通ずるものであり、また、国際信義並びに公序良俗に反するものと認められるものであるから、穏当を欠くものといわざるを得ない。さらに、この商標登録を認めるものとすべき特段の事由があるものとも認められない。

(2)請求人の主張(要旨)について
 請求人は、本願商標を使用した商品を「アルペン」、「スポーツデポ」等の全国の大型店舗で店舗展開している。また、サッカーウェアー、ティーシャツ、バッグ類を初めとして多くのサッカー関連商品に長年にわたり継続して使用しており、その結果、サッカー関連商品において周知著名な商標としてサッカーファン、サッカー関係者に親しまれている。さらにブラジル連邦共和国での商品生産と販売も開始しており(甲第1号証の会社経歴書)、ブラジルにおいてもサッカー関連商品を取り扱う企業として周知な日本企業の一つとなっている旨、主張し、証拠方法として甲第1号証乃至甲第8号証を提出している。
 しかしながら、請求人が本願商標を、サッカーに関連する商品に使用し、サッカーファン及びサッカー関係者に親しまれているとしても、該事実をもって、本願商標が商標法4条1項7号に該当しないとする理由とはなり得ないから、請求人の主張は採用できない。
 また、請求人は、過去の登録例を挙げ、本願商標も同様に登録されるべきである旨、主張しているが、本願商標が登録されるべきか否かは、過去の登録例に拘束されることなく、個別、具体的に検討されるべきものであり、また、登録出願された商標が商標法4条1項7号に該当するか否かの判断時期は、査定時又は審決時と解されるものであることからすれば、請求人が挙げた商標登録例の存在によって、前記判断は左右されるべきものではなく、請求人の主張は採用できない。その他、請求人の主張をもってしても、原査定の拒絶の理由を覆すに足りない。

(3)まとめ
 以上によれば、本願商標を商標法4条1項7号に該当するとして拒絶した原査定は妥当であって、これを取り消すことはできない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '11/05/04