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 商標「」は、経済産業大臣が指定する欧州環境庁の略称を表示する標章と同一又は類似であるから、商標法第4条第1項第3号に該当する、と判断された事例
(不服2009-16378、平成22年11月8日審決、審決公報第134号)
 
1 本願商標
 本願商標は上掲の通りの構成よりなり(色彩は原本参照)、第42類に属する役務を指定役務として、平成20年6月13日に登録出願され、指定役務についてはその後補正されている。

第2 原査定の拒絶の理由
 原査定は、「本願商標は、多少の図案化を施しているとしても、容易に『EMA』の欧文字を表したと認められるものであるが、『EMA』の欧文字は『欧州環境庁』を表示する標章であって、経済産業大臣が指定するもの(平成19年7月19日経済産業省告示第189号)と同一又は類似のものと認める。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
 商標法第4条第1項第3号は、「国際連合その他の国際機関を表示する標章であって経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標は、商標登録を受けることができない。」とするものであって、工業所有権の保護に関する国際間の条約であるパリ条約第6条の3(1)(b)の規定の趣旨を受けて設けられたものである。
 そして、同条約の規定の目的とするところは、同盟国が加盟している政府間国際機関の紋章、旗章その他の記章、略称及び名称については、これと同一又は類似の標章を工業所有権の保護対象から除外することにより、当該機関の主権を尊重し、その権利と尊厳を維持・確保することにあり、前記法条の規定はこれと同趣旨をもって、一私人に独占させることにより当該国際機関等の尊厳性を害し、企益上支障のあるような標章は、登録しない旨を定めたものと解される。
 そこで、検討するに本願商標は、上掲の通り、青色の色彩を施してややデザイン化されているとしても、欧文字である「EMA」(「M」の文字部分には、小さく赤色の「・」がデザインされている。)を表したものと容易に理解、認識されるものである。
 そして、「EMA」の文字は、商標法第4条第1項第3号の規定に基づき、経済産業大臣が「欧州環境庁の標章指定」(平成19年7月19日経済産業省告示第189号)として指定する標章の一、すなわち、欧州環境庁の略称を表示する標章「EMA」の文字と、その綴りを同じくするものである。
 してみれば、本願商標は、経済産業大臣が指定した前記標章と類似する商標であるというほかはなく、したがって、本願商標を商標法第4条第1項第3号に該当するとした原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
 なお、請求人は、請求の理由において、「『EMA』は『欧州環境庁』のオランダ語表記である『Europees MilieuAgentschap』の頭文字をとったものであるが、我国においては、オランダ語は一般に全くなじみがなく、ましてやその頭文字語である『EMA』をそのように認識することは現実に不可能である。我国においては、英語表記『European Environment Agency』の頭文字をとった『EEA』が一般で、インターネット検索や一般のニュースサイトをはじめ、これを『EEA』の略語で表記していることから明らかである。」旨及び過去の審決例を挙げ本願商標も登録されるべきである旨生張するが、「EMA」の文字については、商標法第4条第1項第3号の規定に基づき、経済産業大臣が「欧州環境庁の標章指定」(平成19年7月19日経済産業省告示第189号)として指定する標章の一であること、前記認定の通りである。
 そして、たとえ、我国のインターネット情報や一般のニュースサイトにおいては「EEA」と表示されているとしても、それらの実情をもって、「EMA」の文字が欧州環境庁の略称を表示する標章の一であることを否定することは適切ではなく、商標法第4条第1項第3号の規定に基づき、経済産業大臣が指定する標章を一私人に独占させることは、上記パリ条約の趣旨に反し穏当を欠くものといわなければならない。
 したがって、請求人の主張は採用することができない。
 よって、結論の通り審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '11/10/11